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『経方方証縦横』に学ぶ桂枝加竜骨牡蠣湯の注家方論と医案

漢方医学

『経方方証縦横』の出典に基づき、「桂枝甘草龍骨牡蠣湯」の「注家方論」と「医案選録(名医験案)」について説明する。

注家方論(歴代の注釈家による考察)

この項目では、5名の医家による解釈が紹介されており、陰陽の乖離をどのように調和させ、浮越した陽気(正気)をどのように収斂するかについて多角的に考察されている。

  • 成無己(『注解傷寒論』): 桂枝と甘草の辛甘の性質によって経中の火邪を発散させ、龍骨と牡蛎の渋(収斂)の性質によって浮越した正気を収斂させると解説している。
  • 王子接(『絳雪園古方選注』): 龍骨と牡蛎の「純陰」の性質は、桂枝と甘草の「清陽」の力を借りてこそ経脈に導入され、浮越した火を収斂して亡陽の危機を鎮めることができるのだと指摘している。
  • 許宏(『金鏡内台方議』): 火逆の後に誤って下し、裏気が虚したところに焼針を加えたため、熱に煩わされて心神が不安となり「煩躁」が生じたと分析している。そこで桂枝で経中の邪を散らし、陰気を助長する恐れのある芍薬を去り、龍骨・牡蛎を加えて浮越した正気を収斂するのだと述べている。
  • 銭潢(『傷寒溯源集』): 外邪が未尽のまま真陽が失われそうになって陰が躁いでいる状態であるが、驚狂に至るほどではないため蜀漆(痰を去る激しい薬)は不要であると説明している。桂枝湯から芍薬・生姜・大棗を去って外を解し、龍骨・牡蛎で内を鎮め摂めるという、薬の大小軽重の妙を示していると評価している。
  • 陳修園(『長沙方歌括』): 火逆により陽が上に亢進している状態で急に下すと、陰は下に陥り、陽が上で陰と出会えずに「煩」となり、陰が下で陽と出会えずに「躁」となると病理を分析している。龍骨・牡蛎の「水族の物」で亢ぶる陽を抑えて陰に交わらせ、桂枝の辛温で陰気を啓発して陽に交わらせ、さらに多量の甘草で中焦を助けることで、上下の陰陽の気を「中土」で交通させて煩躁を平らげるのだと絶賛している。

医案選録

この項目では、心悸や自汗、心筋炎などに対して本方を応用した3つの臨床例が紹介されている。

  • 劉渡舟の医案(心悸と心神不寧): 夜間の過労によって心神を消耗し、激しい動悸(心悸)と精神不安、坐立不安に陥った患者に対し、「心気が虚して神を収斂できていない」と診断して本方(桂枝9g、炙甘草9g、龍骨12g、牡蛎12g)を投与し、わずか3剤で治癒させた例である。
  • 岳美中の医案(首の激しい自汗): 首(項部)から1日中汗が滴り落ちて止まらず苦しんでいる40歳男性に対し、太陽の経脈が通る首からの長期の汗は「経気の上衝」によるものと診断した。陽を和して逆を降ろし、営衛を調和して浮越した気を収斂する目的で本方を与えたところ、計8剤で自汗が完全に止まった。
  • 王小娟の医案(ウイルス性心筋炎による期外収縮): 動悸、胸悶、息切れ、不眠などを伴う頻発性の期外収縮(早搏)に1年以上悩む36歳女性に対し、「心陽不振・心気不足」と弁証した。本方に紅参、丹参、苦参、栝楼、薤白、黄芪、鬱金などを加味して益気温陽・安神定悸を図った結果、30剤(!)で自覚症状が消失し、心電図上の期外収縮も確認されなくなるまで回復した。

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