ドイツの社会学者ニクラス・ルーマンは、Zettelkastenを「相談相手」としていたという。
Zettelkastenとは、氏が考案した情報整理と思考のためのメモ術である。このシステムを用いて、氏は多量の本や論文を世に送り出した。具体的な実践方法は検索すればいくらでも見つかるし、先達による体験的コンテンツも豊富に存在する。本ブログでもすでにいくつかの記事を公開しているため、ここでは改めて詳述しない。
しかし、「Zettelkastenを知るまでアウトプットがほとんどなかった者が、この手法を取り入れた途端に多数の著作や論文を世に出した」という話は、寡聞にして知らない。これまで書けなかった者は書けないまま世に出ず、すでに多くの著作を出していた者は、それまで通り多く出し続けているのが現実である。
Zettelkastenの真の目的は単なる情報整理ではない。着想から執筆、発行に至るまでのプロセスを支えるからこそ、人はそこに夢を見る。そしてもう一つの重要な側面が、「相談相手」としての機能である。
CosenseとNotebookLMがもたらした化学反応
私はこれまで、ZettelkastenをGoogleドライブ上で構築してきた。ブログ記事程度の執筆であればいくつかのアウトプットに繋がってはいたが、次々と「永久保存メモ」が作成されるような段階には至っていなかった。
話は変わるが、私は過去にZettelkastenの試行としてCosense上で800程度のページを作成し、そのまま放置していた。最近になり、ChromeのAI機能を使いCosense上で問い合わせを行うと、そのノートの範囲内で精度の高い回答が生成されることに気付いた。さらに調べると、Cosenseは約1年前から「AI Export」という機能を提供している。これは該当ページから2ホップリンク先の情報までエクスポートできるものであり、そのデータをNotebookLMに読み込ませれば、指定範囲内での回答が可能となる。
そこで、リンクすら満足に張っていなかったCosenseのデータをAI Export経由でNotebookLMに入力してみた。データの内容は、「大塚敬節が創薬した七物降下湯を経方医学の視点から説明する」とだけ書き残し、放置していたものだ。なぜそのようなメモを残したのかすら忘れていたため、テストにはちょうど良かった。
永久保存メモの呪縛からの解放と思考の加速
結果から言えば、NotebookLMとのやり取りは時間を忘れるほど楽しいものであった。
データに不足がある場合は「この部分の情報がないため他を当たれ」と促される。それに従って追加の資料を読み込ませるなどし、最終的には納得のいく答えらしきものに到達した。我に返って気付いた。私はまさに、NotebookLMを介して自身のノートと「相談」しているではないか。そして、それが楽しくて仕方がないのである。こうして対話から生成された思考は「1ノート1アイデア」の原則に基づき、改めてCosenseのページとして落とし込んだ。
七物降下湯を経方医学の視点で病機として捉え、配薬から方意を解釈する。これはあくまで私個人の思索であり、当然ながらそれを直接裏付ける具体的な引用文献など存在しない。「経方医学第何巻のどこに書いてある」と示せる性質のものではないのだ。
しかし、対話を通じて得た答えは深く腑に落ち、納得できるものであった。これまで私は、明確な引用文献がない独自の発想をZettelkastenの「永久保存メモ」の定型フォーマットに落とし込むことを困難に感じ、ページを作成できずにいた。知らず知らずのうちにブレーキがかかり、オリジナルの発想を深めることを阻害していたのである。
この気づきは、一つの明確な解決策を提示している。すなわち、湧き上がるアイディアや独自の解釈は、まずすべてCosenseへ投入してしまえばよいのだ。そして、明確な引用文献が示せる堅牢なアイディアのみを厳選し、Zettelkastenの「永久保存メモ」として清書する。このように役割を明確に分ければ、これまで無意識にかかっていた思考のブレーキが外れ、執筆のアクセルを思い切りふかすことができるようになるのではないか。
まだ完全に言語化できる段階ではない。しかし、AIを通じたCosenseやNotebookLMとの新たな関わりは、私のZettelkasten構築を大きく進歩させる確かな予感をもたらしている。この感覚の正体は何なのか。今後も同様の試行を繰り返し、検証を続けていきたい。


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