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『経方方証縦横』に学ぶ桂桂枝加芍薬湯の注家方論と医案

漢方医学

 

『経方方証縦横』について、「桂枝加芍薬湯」の「注家方論」と「医案選録(名医験案)」は以下の通りである。

注家方論(歴代の注釈家による考察)

この項目では、3名の医家が、なぜ桂枝湯の芍薬を倍量にするのか、そして太陽病の処方でいかにして太陰病を治すのかというメカニズムについて考察している。

  • 王子接(『絳雪園古方選注』): 本方は太陽の処方で太陰の病を治療する「陰和陽(陰をもって陽を和す)」の法であると述べている。芍薬を倍量に増やして甘草と組み合わせることで「太陰の主薬」となり、太陽の陽邪が太陰に留まらないようにする効果があると解説している。
  • 銭潢(『傷寒溯源集』): 芍薬を増やすのは、誤下によって傷ついた脾の陰気を収斂するためだと説明している。さらに張元素の「生姜と同用すれば経を温め、胃気不通による腹痛を治し、脾経に入って中焦を補うため太陰病に欠かせない」、李時珍の「白芍は脾を益し、土中(脾)の木(肝)を瀉すことができるため倍量にするのだ」という言葉を引用してその効能を高く評価している。
  • 魏荔彤(『傷寒論本義』): 芍薬を倍量にする意図の中には「陽を引いて陰に入れ、陰から陽へ転じさせる」治法と病機が隠されていると分析している。太陽病の誤下によって太陰に陥った病を、再び昇挙させて太陽に戻すのだと指摘している。

医案選録(名医の臨床カルテ)

この項目では、慢性化した赤痢(下痢・しぶり腹)や、大病後の頑固な便秘に対して本方を応用した3つの臨床例が紹介されている。

  • 劉渡舟の医案1(慢性赤痢・しぶり腹): 46歳の男性。細菌性赤痢が治りきらずに慢性化し、1日に何度も急な便意を催して間に合わずに衣服を汚してしまい、腹痛と腸鳴、しぶり腹(里急後重)を伴っていた。他の医師による様々な寒熱・補渋の薬が無効であったが、脈が沈弦で滑、舌が紅で苔が白であったことから、「脾胃の陰陽不和により、肝気が鬱して脾に乗じている(木鬱土中)」証と診断された。本方(桂枝9g、白芍18gなど)で脾胃の陰陽を調和させ、土中の木を平らげる治療を行ったところ、4剤で完治した。
  • 劉渡舟の医案2(膿血を伴う慢性菌痢): 52歳の男性。1年間も下痢が続き、1日に3〜6回の水様便(少量の膿血混じり)があり、しぶり腹と左下腹部の圧痛に悩まされ、西洋医に「慢性菌痢」と診断されていた。これも「脾臓気血凝滞、木鬱土中」と弁証して本方(白芍は30gと重用)を投与したところ、2剤で下痢が激減し、4剤で諸症状がすべて消え去った。
  • 祝諶予の医案(大病後のコロコロ便・便秘): 62歳の男性。急性肺炎の治癒後、体力が衰え食欲がなく、10日以上排便がないか、出てもウサギの糞のようなコロコロ便(球状)で苦しんでいた。「大病によって陰液が大きく傷つき、腸が枯れて潤いがない」と診断され、本方をベースに腸を潤す当帰と肉蓯蓉を加えた処方(桂枝9g、白芍30g、当帰15g、肉蓯蓉30gなど)を与えたところ、1剤で排便があり腹の張りが消え、6剤で食欲や精神が回復した。その後は同処方を丸薬にして服用し、効果を固めた。

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