毎日午前7時にブログ更新

腹痛・腹部膨満感に対する『経方化裁』 加減と適応

漢方医学

 腹痛と一言で言って、肝胆に処方をしてはならない。原因を探索すべきである。診断が明らかにならない段階では、予想しうる治療内容に邪魔にならない程度の処方に留めるべきである。勿論、精査の上原因不明ならば、この限りではない。

『経方化裁』のドキュメントから、「腹痛・腹部膨満感」に関連する実践的な加減方を抽出・整理した。各方剤の適応根拠と、生薬の加減およびその理由(病機・治方)を以下にまとめる。

  1. 小建中湯
    【適応根拠】 腹部がしくしく痛み(腹中痛)、温めたり手で押さえたりすると痛みが和らぐ(喜温喜按)状態に用いる。疲労感、動悸、顔色不良など、脾胃の虚寒(胃腸の冷えとエネルギー不足)による状態が適応となる。
    【実践的な加減方と理由】
    自汗(ダラダラと汗が出る): 黄耆、防風を加える。気を補い体表を固める(固表)ためである。
    盗汗(寝汗): 浮小麦、桑白皮、青蒿、地骨皮を加える。虚熱を清めて汗を止めるためである。
    食欲不振・消化不良(胃納不佳): 鶏内金、神曲、党参、白朮などを加える。消化を助け、脾胃を健やかにするためである。
    気血の明らかな虚弱: 肉蓯蓉、黄精、枸杞子、当帰、黄耆、熟地黄などを加える。不足した気血を補うためである。
    瘀血による痛み: 田七を加える。血の巡りを良くして痛みを止めるためである。
    虚弱な便秘(虚秘): 生地黄、白朮、火麻仁などを加える。腸を潤して便通を良くするためである。
    寒さが重い: 蜀椒(花椒)を加える。寒さを強力に散らすためである。
    気滞(気の滞り): 木香を加える。気の巡りを良くするためである。
    軟便・下痢(便溏): 白朮を加える。脾を健やかにして湿を除くためである。
  2. 厚朴三物湯
    【適応根拠】 腹部が張って痛む、便秘、おならが出ない、舌が紅く苔が黄、脈が滑で力があるなど、気滞と実熱が結びついた状態に用いる。
    【実践的な加減方と理由】
    脇腹の痛みが明らか: 川楝子、延胡索を加える。肝の気を疎通させ、気を巡らせて痛みを止めるためである。
    腹部の移動性の痛み(腹竄痛): 木香、烏薬、沈香、鬱金を加える。理気(気の巡りを良くする)の働きを助けて痛みを和らげるためである。
    腹痛が下腹部や睾丸に引きつる: 橘核、荔枝核(ライチの種)、小茴香などを加える。下腹部の気を温め、巡らせるためである。
    腹痛と腸鳴り: 陳皮、香附、大腹皮を加える。気を巡らせて痛みを止めるためである。
    腸閉塞で腸の気滞がある: 莱菔子を加える。気を下ろして滞りを解消するためである。
    腸閉塞で気滞血瘀がある: 桃仁、丹参、赤芍を加える。気血を巡らせて瘀血を解消するためである。
  3. 厚朴七物湯
    【適応根拠】 腹部の張りと満ちた感じ、発熱、悪風寒、便秘、舌苔が黄色く厚い、脈が浮数など、表証(風邪など)に裏の実熱(便秘や腹部膨満感)が伴う状態に用いる。
    【実践的な加減方と理由】
    嘔吐がある: 半夏を加える。胃の気を和らげ、逆上する気を降ろすためである。
    下痢がある: 大黄を去る。瀉下(便を下す)の必要がないためである。
    寒さが強い: 生姜を増量する。寒邪を散らすためである。
    腹部の張りが強くおならが少ない: 香附、大腹皮、木香、砂仁などを加える。気の巡りを良くするためである。
    気滞が重く、脇腹の張りや痛み、ため息が出る: 香附、青皮、木香、仏手、枳殻、川楝子を加える。肝の気を疏通し、気を巡らせるためである。
  4. 大建中湯
    【適応根拠】 腹部の激しい痛み、寒気が上に突き上げる、嘔吐、腹部に時々しこりが突き出る、痛むときは触られるのを嫌がる、食事ができない、舌質淡、苔白滑、脈沈弦など、中焦(胃腸)の著しい虚寒(冷え)と気機の逆乱がある状態に用いる。
    【実践的な加減方と理由】
    腹部の張りと満ちた感じ: 厚朴、砂仁を加える。気を巡らせて張りを取るためである。
    寒さが強い、または頭痛とめまい: 呉茱萸を加える。寒さを散らして気を降ろすためである。
    悪寒がある: 附子を加える。陽を温めて寒を散らすためである。
    嘔吐がある: 姜半夏、生姜を加える。胃の逆気を降ろして嘔吐を止めるためである。
    脾虚(消化吸収機能の低下): 白朮、山薬、茯苓を加える。脾を健やかにするためである。
    血虚: 当帰を加える。血を養うためである。
    口の渇き: 白芍、天花粉を加える。陰液を養い潤すためである。
    回虫やヘルニアによる腹痛・嘔吐(肝胃虚寒): 白芍、肉桂(官桂)、使君子などを加える。温めて痛みを緩め、虫を下すためである。
  5. 附子粳米湯
    【適応根拠】 脾胃の虚寒による腹痛、腸鳴り、胸から脇への張りと突き上げる感じ、嘔吐して食事が少ない、舌質淡、苔白滑、脈沈緊など、中焦の虚寒と水飲(余分な水分)の停滞がある状態に用いる。
    【実践的な加減方と理由】
    寒さが強く痛みが激しい: 干姜、肉桂を加える。寒邪を取り除き、陽を温めるためである。
    嘔吐が激しい: 呉茱萸、竹茹を加える。逆上する気を降ろして嘔吐を止めるためである。
    胃寒による痛み: 荜茇、陳皮を加える。寒さを散らし、気を巡らせる力を高めるためである。
    痛んで胸がつかえ、げっぷや嘔吐があり、食滞(消化不良)を伴う: 枳実、神曲、鶏内金などを加える。食べ物の滞りを消化・排出するためである。
    胃寒が強く、薬を飲むと吐き戻す: 丁香、砂仁を加える。胃を温め気を降ろすためである。
    便秘がある: 枳殻を加える。気を巡らせて便通を促すためである。
    気鬱による長引く下痢: 赤石脂を加える。気を引き締め、腸を渋らせて下痢を止める(渋腸固脱)ためである。

YouTubeもやってます!

コメント

タイトルとURLをコピーしました