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【杖道】引提に隠された間

杖道

 杖道を指導してくださるI先生は、9年前から私をずっと見守ってくれている。

 三本目の型「引提(ひきさげ)」も入門初年度に教わったものであり、当然ながら現在も稽古を続けている。

 I先生が太刀側を務める際、太刀を振りかぶった状態で一旦止まり、私に向けて必ずかける言葉がある。「いきますよ」あるいは「大丈夫ですか」といった一言である。

 初めて習う頃ならいざ知らず、四段に昇段した今でもその対応は変わらない。これまではその間(ま)にすっかり慣れきっていたが、最近になり少し気になり始めた。

  「いつまでも初心者扱いして」と不満を抱いているわけではない。おそらくそういう意味ではないのだ。それでも、何かが心に引っかかっていた。

先日、利府での講習会で学んだことの一つに「構えは素早く」という教えがあった。

 その理由は、相手の次の攻撃に対して直ちに準備を整えるためである。動きが遅れれば、次の動作に移るための余裕が失われてしまう。

 だからといって、ただ急げばよいというものではない。慌てて構えようとすれば動きが雑になり、型を失敗する大きな誘因となる。私に至っては、型が崩れるどころか杖を落としかねないほどである。

 思えば以前から「素早く構えるように」との指導は受けていた。「型に緩急をつけると見栄えが良くなる」というありがたい助言ではあったが、「目的は外見を良くすることか」と捉え、習得を後回しにしていたのだ。

 しかし、それが「太刀の連続攻撃に対応するため」に不可欠な動作であるならば、喫緊の課題である。そう判断し、狭い自室でも杖や太刀を手に、素早く構える練習を日常的に始めていた。

 思考を巡らせるうち、ふと「引提」におけるI先生の、太刀を振りかぶった際のあの「間」を思い出した。

「その遅い動きでは太刀が頭に届いてしまう。一足一刀の間合いになっているけどさっさと構えなくて大丈夫か?」という、先生なりの無言のメッセージなのではないか。

常に気にかけてくださるI先生。次の稽古の折に、実際のところはどういう意図なのか伺ってみるつもりである。

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