16時間断食をストイックに継続しているにもかかわらず、「なぜか内臓脂肪が落ちない」「体重の減少が停滞している」と悩む人は少なくない(、と思う)。
その原因は、もしかすると食事の前に「良かれと思ってやっていた習慣」にあるかもしれない。かく言う私自身も、独自の工夫論に固執し、あわや逆効果になりかねない罠に陥っていた一人である。
本稿では、私が自らの過ちに気づき、最新の科学的知見(論文)に基づいて軌道修正した、現時点で最良の「プレロード(食前負荷)戦略」について解説する。
良かれと思った「食前の油」が内臓脂肪を増やす罠
これまで私は、16時間断食後に起きやすい急激な血糖値の上昇(血糖値スパイク)を避けるため、最初の食事の15分前にMCTオイル入りの骨髄エキススープとサイリウムを摂取していた。
最近になり、断食に伴う胆石形成のリスクを予防する目的で、MCTオイルからオメガ3脂肪酸である「亜麻仁油(アマニ油)」への切り替えを図った。健康に良いとされる亜麻仁油を食前に飲めば、急激なインスリン分泌を抑えられると考えたからだ。
ところが、文献を紐解くと衝撃の事実が判明した。MCTオイル以外の脂肪酸(亜麻仁油などの植物油を含む)は、消化管の受容体(GPR120やGPR40)を介して、GIP(胃抑制ポリペプチド)というホルモンの分泌を強力に促進してしまうのである。GIPが過剰に分泌されると、結果としてインスリン分泌が過剰に促され、内臓脂肪の蓄積を招く方向に働いてしまう。
つまり、良かれと思って亜麻仁油を「食前に単体で」摂取することは、内臓脂肪増加のリスクを高める悪手であったのだ(1)。

論文から導き出した「プレロード」の正解
では、食前に何を摂取すればインスリンの過剰分泌と内臓脂肪の蓄積を抑えられるのか。エビデンスに基づく最適解は、以下の組み合わせである。
- 食前30分のレモン水
食事の前にレモン果汁を摂取することで、食後の高血糖が有意に抑制されることが分かっている。これは、レモンに含まれるクエン酸などの有機酸が関与していると考えられている(2)。
- 食前15分のホエイプロテイン(15g)
食前に少量のプロテインを摂取することは、極めて理にかなっている。食前にホエイプロテインを摂取することで、膵臓のβ細胞の機能が向上すると同時に、インスリンクリアランス(血中からインスリンが消失する速度)が低下する。これにより、膵臓に過剰な負担をかけてインスリンを大量分泌させることなく、効率的に食後血糖値をコントロールできるのである(3)。
- 食事「中」の亜麻仁油とサイリウムの最強タッグ
亜麻仁油、配置を変えればこれまで食前に飲んでいたサイリウムも、決して捨てる必要はない。摂取のタイミングと組み合わせを変えればよいのだ。
論文の知見によれば、亜麻仁油を高食物繊維食と組み合わせる(食事全体のオメガ3/総脂質比を高める)ことで、食後のGIP過剰分泌をむしろ抑制し、内臓脂肪の減少が期待できる。この「高食物繊維」の役割として、水溶性食物繊維の塊であるサイリウムがまさに最適なのである。
つまり、亜麻仁油とサイリウムは「食前」に摂るのではなく、「食事中」に強力なタッグとして同時摂取すべきなのだ(4)。
新たなプレロード戦略の実践ルール
そもそもの私の誤りは、断食後あるいは食事開始後のインスリン急激分泌を抑制するための研究など存在しないと思い込んでいたことである。プレロードと言う言葉すら知らなかった。もし最新の論文がたまたま目に触れなければ、未だに迷いと思い込みの中で、まさに「無知の知」を知らずに過ごしていたかもしれない。
無知とは恐ろしいものであるが、新たな事実が判明した段階で、躊躇なく習慣をアップデートしていく柔軟性こそが重要である。本格的に間違った習慣を定着させる前で幸いであった。これからは、一つひとつの機序を徹底的に調べる姿勢をさらに強化していく所存だ。
日々の生活スタイルや勤務状況は変動するため、ガチガチの時計基準ではなく、以下のような汎用的なルールとして日常生活に落とし込むことを推奨する。
- 最初の食事の30分前: レモン水を飲む
- 最初の食事の15分前: ホエイプロテインを15g摂取する
- 食事中: 亜麻仁油とサイリウムを摂取する
まずはこの新習慣を私自身が実践し、経過は今後のブログで詳細に報告するので、ぜひ楽しみにしていてほしい。
思い込みを捨て、最新の科学的根拠に基づいて日々の習慣をアップデートし続けること。これこそが、真の健康へと至る最短ルートであろう。
(1)Sankoda A, Harada N, Iwasaki K, Yamane S, Murata Y, Shibue K, Thewjitcharoen Y, Suzuki K, Harada T, Kanemaru Y, Shimazu-Kuwahara Satoko, Hirasawa A, Inagaki N. Long-Chain Free Fatty Acid Receptor GPR120 Mediates Oil-Induced GIP Secretion Through CCK in Male Mice. Endocrinology. 2017 May 1;158(5):1172–1180. doi: 10.1210/en.2016-1891.
(2)Yagi M, Uenaka S, Ishizaki K, Sakiyama C, Takeda R, Yonei Y. Effect of the postprandial blood glucose on lemon juice and rice intake. Glycative Stress Research. 2020;7(2):174–180.
(3)Smith K, Taylor GS, Walker M, Brunsgaard LH, Bowden Davies KA, Stevenson EJ, et al. Pre-Meal Whey Protein Alters Postprandial Insulinemia by Enhancing β-Cell Function and Reducing Insulin Clearance in T2D. J Clin Endocrinol Metab. 2023 Jul 14;108(8):e603-e612. doi: 10.1210/clinem/dgad069. PMID: 36734166; PMCID: PMC10807909.
(4)Sakane N, Osaki N, Takase H, Suzuki J, Suzukamo C, Nirengi S, Suganuma A, Shimotoyodome A. The study of metabolic improvement by nutritional intervention controlling endogenous GIP (Mini Egg study): a randomized, cross-over study. Nutr J. 2019 Sep 2;18(1):52. doi: 10.1186/s12937-019-0472-0.


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