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経方方証縦横に学ぶ三物白散の弁証要点、仲景方論、注家方論、医案

漢方医学

経方方証縦横における三物白散について、「弁証要点」「仲景方論」「注家方論」「医案」をまとめる。

 

  1. 弁証要点(証の要点)

 

  • 基本病機と治則:水寒(水毒と寒邪)や寒痰が体内に固く結びついた病態(水寒互結内実・寒実結胸)を治療する。治則は「温逐寒飲、除痰散結」(寒飲を温めて追い払い、痰を除いて結びを散じる)である。

 

  • 方剤構成

  • 巴豆(去皮心、熬黒、研如脂:一分=3g):大辛大熱で猛毒を持ち、寒飲を強力に破り、冷積(冷え固まった邪気)を瀉下して追い出す。

 

  • 貝母(三分=9g):気を下して化痰し、胸の鬱結を開く。

 

  • 桔梗(三分=9g):肺気を開提(宣通)し、薬力を胸の上部へと載せる「舟楫(船とオール)」の役割を果たし、巴豆が上焦の寒飲を攻めるのを助ける。

 

  • 服用法と「粥」によるコントロール(得熱則行、得冷則止)

生薬を散剤(粉末)とし、白飲(重湯や粥の上澄み)で服用する。体力のある者は半銭、虚弱な者はさらに減量する。病邪が胸膈の上にあれば吐き(膈上必吐)、下にあれば下利(排泄)して解ける(膈下必利)。 服用後に下利が進まない場合は「熱粥(温かい粥)」を1杯飲むと、巴豆の熱性が助けられて瀉下が促される(得熱則行)。逆に下痢が止まらなくなった場合は「冷粥(冷たい粥)」を1杯飲むと、巴豆の熱性が抑えられて直ちに下利が止まる(得冷則止)。

  • 水ではなく粥を用いるのは、米の穀気によって胃腸の正気を保護し、巴豆の激しい毒性から胃を守るためである。

 

  • 臨床での使用目標

寒実結胸(熱証を伴わない結胸)、心下硬痛(みぞおちが硬く痛む)、大便不通(頑固な便秘)、手足の冷え(厥逆)、咳痰、嘔逆、脈沈滑、舌苔白膩などを目標とする。

 

  1. 仲景方論

張仲景の『傷寒論』第141条に本方の主治が示されている。

 

  • 『傷寒論』第141条:「寒実結胸、無熱証者、与三物小陥胸湯、白散亦可服。

(※寒邪と水飲が結ぼれた寒実結胸で、発熱などの熱証を伴わないものに対し、三物小陥胸湯や三物白散が適していることを説いている。)

 

  1. 注家方論(歴代注釈家による考察)

歴代の医家たちは、劇薬である巴豆を用いながらも、桔梗・貝母との組み合わせや粥による制御で見事に邪を叩く本方の理を以下のように解説している。

 

  • 成無己(『注解傷寒論』):「辛は以て散じ、苦は以て泄す」の理に基づき、桔梗・貝母の苦辛な性質によって下気させ、巴豆の大辛な性質によって結ぼれた寒実を撃破・散じると解説している。

 

  • 方有執(『傷寒論条辨』):桔梗・貝母が水飲を消して胸膈を開き、巴豆の辛温な性質が寒邪を散じて水を追い出す。寒邪の結びつきが極めて重く、小陥胸湯では解決できない病態に対し、本方が選択されると論じている。

 

  • 呉謙(『医宗金鑑』):本方は寒実の痰水結胸を攻める極めて峻烈な処方である。君薬の巴豆は大辛大熱で「斬関奪門」の勢いをもって寒水を破壊する。貝母で胸の結びを開き、使薬の桔梗を「舟楫」として巴豆を胸の病巣へと導く。毒に任せて攻めるだけでなく、強弱に応じて量を減らし、熱粥・冷粥で粥の穀気を借りて胃を保護しながら下利を自在にコントロールする、極めて周到な方意を絶賛している。

 

  • 陳蔚(『長沙方歌括』):巴豆の辛熱で寒実を散じ、貝母で胸結を開き、桔梗で肺気を開く。湯剤とせず「散剤」とするのは、散じて速やかに邪を攻め落とすためである。

 

  1. 医案選録(名医の臨床カルテ)

本方は、長年治らなかった頑固な寒痰や、小児の急迫した重症肺炎の痰詰まりなどに劇的な効果を上げている。

 

  • 『仲景方臨床応用指導』の医案(1年以上続く黒痰の喀出・寒痰凝結)

34歳の男性。1年余りにわたり黒い痰を吐き続け、冷えによって悪化し、咽喉の冷え、温かい飲み物を好む、胸悶、舌淡、苔薄略膩、脈沈を呈していた。これを寒痰が胸に凝結した病態と診断し、三物白散に厚朴、麻黄、紫蘇、生姜を加味した処方を投与したところ、黒痰や咽喉の冷えが劇的に減少・消失し、11剤で完全に完治した。

 

  • 王吉椿の医案(5歳小児の重症肺炎・激しい痰鳴と呼吸困難の救治)

5歳の女児。春に肺炎にかかり、点滴や酸素吸入を数日受けるも効果がなかった。鼻翼が激しく動き、唇は紫色、喉からは鋸を引くような激しい痰の音が鳴り響き、両肺に湿囉音が満布し、脈は細数であった。三物白散1.5gに少量の麝香を加え、冷開水で服用させたところ、わずか20分後に約100mlの大量の痰水を吐き出し、呼吸が即座にスムーズになった。翌日には症状が劇的に軽減し、半月で元気に完治した。

 

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