やはり難しい。フロンティアを開拓するのは、そう簡単なことではなかった。
「GoogleドライブでZettelkasten(ツェッテルカステン)を構築する」という野望を抱き、去年あたりからGeminiと相談しながら独自の知識管理システムを作り上げてきた。ファイル数(永久保存メモや文献メモ)も大凡100程度になり、それなりの形になってきたと思っていた。
しかし、結論から言うと、私はGoogleドライブでのZettelkasten構築を諦め、Obsidianに帰還することにした。
ルーマン先生のようにすべてを自力で、しかも汎用ツールで構築していくのは、時間的・頭脳的な限界からまず無理だと思い知ったのだ。やはり、誰かが切り拓いてくれた専用ツールの道を大人しく進むのが一番である。これは、私の1年越しの名誉ある撤退と失敗談だ。
思考が途切れる絶望。バックリンクの大切さを知る
なぜGoogleドライブでの運用に限界を感じたのか。
それは、「過去のファイルを集めて、再度新しい文章を作ること」があまりにも困難だったからだ。
直近のメモならまだいい。しかし、以前の内容から知識を引き出して文章化しようとすると、途端に手が止まる。とりあえず目に触れればいいか、と作ったノートを更新していくのも大義だった。
それでも最後はノリ良く、Googleドキュメント内でいくつもリンクが貼られたファイルを行き来して執筆しようと試みた。そしてそこで、決定的なストレスに気づいてしまったのだ。
「リンク先から、元のファイルに戻れない」
Googleドキュメントのリンクは片道切符だ。リンクを踏んで飛ぶことはできても、「この記事はどの文脈からリンクされていたんだっけ?」と振り返ることができない。バックリンク(被リンク)の表示がないため、ジャンプするたびに思考がブツッと途切れてしまうのだ。
「これがないと、思考が繋がらない……」
この行き来がささっとできないことは、知識をネットワーク化するZettelkastenにおいて致命的だった。
最後のトドメ:Geminiの無慈悲な完全論破
バックリンクのなさに絶望しつつあった私に、最後のトドメを刺した出来事がある。
これまで1年間、一緒にGoogleドライブでのシステム構築を親身になって手伝ってくれていたAIアシスタントのGemini。ふと気まぐれに、新規チャットでこう聞いてみたのだ。
「Zettelkastenを作るのに、GoogleドライブとObsidian、どちらが適切か?」
するとGeminiは、一瞬の躊躇もなく、以下の「断然Obsidianが優れている根拠の一覧表」を出力してきた。
| 比較項目 | Obsidian | Google Drive(ドキュメント等) |
| リンク構造 | [[]] による双方向リンク・被リンク(バックリンク)の自動集約 | 手動URLリンク(片道のみ・一覧不可) |
| 思考の可視化 | グラフビューで知識の結節点や未開拓領域を俯瞰可能 | フォルダ階層(ツリー構造)による固定分類 |
| 起動・記述速度 | ローカルMarkdownで即時起動・軽快な入力 | ブラウザ/アプリ起動や同期の読み込みラグあり |
| データの持続性 | プレーンテキストで将来にわたり可搬性が高い | 独自形式に依存し、将来的な一括移行のハードルが高い |
おい。
完璧に論破してきやがった。私がさっき痛感した「バックリンク」の問題も一番上にドヤ顔で書かれている。
……お前、今まで話を合わせてたのかよ!
この1年間の苦労を数秒で、しかも圧倒的な正論で全否定された瞬間、私のGoogleドライブZettelkastenへの未練は綺麗さっぱり消え去った。
遠回りで得た真理「Hubノートの重要性」
とはいえ、この1年間の試行錯誤が全くの無駄だったわけではない。
むしろ、不便な環境で泥臭くリンクを手動で繋いでいたからこそ、「Zettelkastenの真の構造」について深く理解することができた。
最初から便利なObsidianを使っていたら気づけなかった最大の収穫は、Hubノート(MOC:Map of Content / ストラクチャーノート)の重要性だ。
ただ無作為にメモを繋ぐだけでは、知識はゴミの山になる。
上位概念は何か、それと対立、並列する概念は何か、より具体的な下位の概念は何か。これらを常に念頭に置きながら「骨格」を作っていくことが、知識を再利用するためには絶対に欠かせないのだ。
この血肉となった知識と構造化のスキルを持って、私は再びObsidianに降臨しようと思う。以前挫折した時とは違い、今の私ならあのツールを乗りこなせるはずだ。
次なるフロンティアと新たな葛藤
かくしてObsidianへの帰還を決意したわけだが、唯一、手放しで喜べないジレンマがある。
それは、ローカル(iCloud Drive等)にファイルを置くObsidianに戻ることで、「文章作成時にGeminiなどのAIの手助けを借りにくくなる」ということだ。
Google Workspaceのエコシステム内にデータがあれば、AIとの連携はシームレスだ。しかし、Obsidianの快適な「思考のリンク」を取れば、AI連携のハードルは上がる。
ツールとしてのObsidianか、あるいはGemini以外の別のAI連携のクラウドか。
Zettelkasten探求の旅は、また新たなフロンティアへと続いていくようだ。


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