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経方方証縦横に学ぶ四逆加人参湯の弁証要点、仲景方論、注家方論、医案

漢方医学

経方方証縦横の四逆加人参湯について説明する。

 

方剤組成:甘草(炙)二両(6g)、干姜 一両半(4.5g)、附子 生用(皮を去り八片に破る)一枚(5g)、人参 一両(3g)。

 

服用方法:水三升で煮て一升二合を取り、滓を去って二回に分けて温服する。

 

基本病機と治則:激しい嘔吐や下痢のしすぎによって陽気が亡び、津液・陰血が脱失した病態(吐利過重、亡陽脱液)を治療する。治則は「回陽救逆、益気生津」(陽気を回復させて救逆し、気を補って津液・陰血を生じさせる)である。

 

方義(配合の意義):四逆湯(生附子・干姜・炙甘草)によって脾腎の陽気を温補して回陽救逆し、そこに加えた「人参」が元気を大補して脱失を防ぎ(固脱)、津液を生じさせて陰血を化生させる。

 

  1. 弁証要点(証の要点)

臨床での決定的な審証(要点):

 

  • 頻繁な嘔吐の後に下痢がピタッと止まる(頻繁吐後而利止)。

 

  • 悪寒して脈が非常に微弱(悪寒而脈微)。

 

  • 水飲が心や肺をかき乱して動悸や咳・喘鳴を起こす症状(水飲凌心射肺)は顕著ではない(※もし水飲の突き上げが顕著であれば、真武湯の適応となる)。

 

他証との重要な比較・鑑別:

 

  • 四逆湯との違い:四逆湯が「回陽止利の中に(甘草等で)陰液を温存する意を含める」のに対し、本方は「回陽止利の中に人参で益気生陰(気を補い陰を生じさせる)の意を直接込めている」ため、陽気が亡び津液・陰血まで乾ききった「陽亡陰渇(亡陽脱液)」の証には本方が明らかに優れている。

 

  • 通脈四逆加猪胆汁湯との違い:通脈四逆加猪胆汁湯は陽気が酷く傷ついて陰寒が内格した重証を主治とするのに対し、本方は「気虚(気の脱失)と津液の損傷」が病態の主体である。

 

  1. 仲景方論

張仲景の『傷寒論』第385条に、本方の主治が明確に提示されている。

『傷寒論』第385条:「悪寒脈微にして復た利し、利止む者は、亡血(津液・陰血の脱失)なり、四逆加人参湯これをつかさどる」。

(※悪寒して脈が微弱なところへ再び下痢をし、その後に下痢が急に止まったのは、治ったのではなく下痢をしすぎて津液や陰血が完全に抜け落ちた(亡血)ためであり、四逆加人参湯がこれを主治する。)

 

  1. 注家方論(歴代注釈家による考察)

歴代の医家たちは、四逆湯に人参を加えることで気・津液・血を同時に救う本方の絶妙な薬理を以下のように論じている。

 

  • 王子接(『降雪園古方選注』): 本方は「亡陰によって下痢が止まった証」を治す処方である。陰が亡びると陽気もそれに伴って去ってしまうため、陰だけを単独で治しても間に合わない。そこで干姜・附子で経脈を温めて陽気を助け、人参・甘草で津液を生じさせて陰を調和させるのである。

 

  • 魏荔彤(『傷寒論本義』): 温中(中焦を温める)の中に、補虚生津(生津とは即ち生血なり)の生薬を佐として配した構成である。病後に亡血して津液が枯渇した病態全般に広く用いることができ、単に霍乱や傷寒の吐下後に限らず応用できる。

 

  • 張璐(『傷寒絵論』): 亡血の際には本来なら姜・附を用いて陰を傷つけるべきではなく、陽虚の際には当帰・芍薬を用いて陰を助けるべきだが、本証は下痢の後に悪寒が止まらず、陽気の下脱が酷いため、四逆湯で陽気を回復(復陽)させるのが最優先(急務)である。人参を加えるのは、津液を保護・持続させるだけでなく、陽薬(姜・附)が人参を得ることでいっそう力を発揮できるからである。もし誤って冷やす陰薬を用いると、お腹が張って食事が通らなくなったり、再び激しい下痢や嘔吐を起こして完全に脱下してしまうと警告している。

 

  1. 医案選録(名医の臨床カルテ)

本方は、下剤の誤用による仮熱真寒の大躁状態から、見捨てられた小児の瀕死の吐瀉、さらには西洋医学で「徐脈(心動過緩症)」と診断された頑固な手足の冷えにまで、劇的な救治効果を上げている。

 

  • 喻嘉言の医案(外感の誤治による大躁・假熱真寒の救治): 徐国禎が傷寒6〜7日目、全身が熱く目が赤くなり、水を求めても口につけず、異常なほど激しく躁狂(大躁)して門窓を開け放ち、地の上に転がり、井戸に入ろうとさえしていた。前医は「承気湯で下すべきだ」と騒ぎ立てたが、喻嘉言は「脈は洪大無倫だが重按すると完全に無力であり、水も咽に流し込もうとしないのは、外に仮熱、内に真寒がある陽欲暴脱の真相である」と見抜いた。 そこで、人参・附子・干姜・甘草の湯(四逆加人参湯)をあえて冷まして投与したところ、服薬後に激しく寒戦して歯がガタガタと鳴り、手足を縮めて陽微の真の病態が表面化した。続けてもう1剤投与したところ、微汗とともに熱が退き、穏やかに全快した。

 

  • 羅謙甫の医案(陰証全具・四肢氷冷・昏睡に陥った傷寒): ある婦人が傷寒8〜9日目で、脈沈細にして数、四肢は逆冷し、腹痛下利、目を閉じ両手を脇に抱えて昏昏と眠り、口舌が乾燥していた。前医が残した白虎加人参湯を飲むべきか尋ねられたが、羅謙甫は「口燥があっても陰証がすべて揃っており白虎証ではない」と一蹴し、四逆湯(150g)に人参・生姜・葱白を加えた大剤(四逆加人参湯加減)を投与した。夜に下痢が止まって手足が温まり、翌朝大汗を得て完全に完治した。

 

  • 趙守真の医案(3歳児の激しい吐瀉・手足氷冷・絶えかけた呼吸の救治): 3歳の男児。吐瀉の放置によって湧くような嘔吐と注ぐような下痢を起こし、痙攣、四肢氷冷、昏睡に陥り、呼吸は糸のように絶え絶えになり、見捨てられて床に横たえられていた。 趙守真の師が腹部を強く押すと目が晶々と輝き神気が残っているのを見抜き、関元などに艾灸をすえ、へそに塩を満たして姜灸を施すと同時に、人参四逆湯(党参18g、生附子12g、干姜9g、炙甘草6g)を急火で濃く煎じて2時間かけて注ぎ込んだ。手足が徐々に温まり、目を自力で啓き、奇跡的に生還した。

 

  • 李克紹の医案(心動過緩症(徐脈)・手足の冷え・胸の詰まりの完治例): 中年女性の西医医師。胸がパンパンに詰まって不快で(胸中満悶)、手足が冷え(手足発涼)、脈は沈遅を呈し、西医で心動過緩症(徐脈)と診断されていたが有効な治療法がなかった。 李克紹が四逆加人参湯を処方したところ、わずか5〜6剤で完全に治癒し、その後も再発しなくなった。

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