『経方化裁』から、「頭痛・偏頭痛」に関連する実践的な加減方を抽出・整理した。各方剤の適応根拠と、生薬の加減およびその理由(病機・治方)を以下にまとめる。
- 呉茱萸湯
【適応根拠】
空嘔吐(干嘔)、よだれや泡を吐く、頭痛(特に頭頂部の冷えや痛みが強い)、みぞおちのつかえ、手足の冷え、イライラなどを伴う状態に用いる。舌苔は白滑、脈は沈弦・遅などに適応する。
【実践的な加減方】
- 表証がない神経性頭痛(頭頂部や両脇に連なる痛み):呉茱萸を単味で用いるか、基本方を用いる。
- 理由(病機・治方):呉茱萸には肝や胃を温めて痛みをとる作用があり、肝経に鬱滞した寒邪を解きほぐし、気を巡らせて痛みを止める(温肝開鬱・暖胃化滞)ためである。
- 小柴胡湯
【適応根拠】
口苦、咽頭の乾燥、目眩、寒熱往来、胸脇苦満、黙々として食欲がない、心煩、嘔吐などを伴う少陽病に用いる。
【実践的な加減方(偏頭痛への応用)】
基本方として、柴胡、半夏、菊花、竹茹、白蒺藜、黄芩、釣藤、白芍、烏梅、甘草を用い、以下の加減を行う。
- 前頭部の頭痛:白芷、防風を加える。
- 理由:頭部(陽明経など)の風邪を散らして痛みを止めるためである。
- 後頭部から首筋の痛み:葛根、羌活を加える。
- 理由:首筋(太陽経)の強ばりを解き、風寒を散らすためである。
- 目の充血・眼球の脹痛:夏枯草、石決明を加える。
- 理由:肝の熱(肝火)を冷まし、上に昇った肝陽を鎮める(平肝潜陽)ためである。
- 視界のかすみ(視物昏花):枸杞子、何首烏を加える。
- 理由:肝腎の陰血を補い、目に栄養を与えるためである。
- 桃核承気湯
【適応根拠】
下腹部の急結・張満、夜間の発熱、狂のようになる(如狂)、大便が黒いなど、下焦に瘀血(蓄血)と熱が結びついた状態に用いる。
【実践的な加減方(外傷性頭痛・脳震盪・脳外傷後遺症など)】
- 頭痛が激しい:麻黄、葛根、川芎、紅花を加える。
- 理由:血行を強力に促し、上部の滞りを開いて瘀血を散らすためである。
- 頭が重くて上がらず、重苦しい痛み:白芷、藁本、蔓荊子を加える。
- 理由:頭部の風湿を散らし、痛みを和らげるためである。
- イライラして眠れない:梔子、淡豆豉を加える。
- 理由:胸中にこもった熱を清め、精神を安定させるためである。
- 麻黄附子細辛湯
【適応根拠】
発熱、悪寒、無汗、四肢の冷えなど、少陰の陽虚と太陽の表寒が併存する状態に用いる。
【実践的な加減方(血管収縮性頭痛)】
- 血管収縮性頭痛の基本加減:四物湯(当帰、熟地黄、白芍、川芎)を合方する。
- 理由:陽を温め寒を散らすとともに、不足した血を養い巡らせるためである。
- 頭痛が長引く:地竜、僵蚕を加える。
- 理由:経絡の滞りを通し、風を鎮め痛みを止める(熄風通絡)ためである。
- 女性で月経乱れを伴う:沢蘭、茜草を加える。
- 理由:血の巡りを整え、月経を調整するためである。
- 頭風摩散
【適応根拠】
偏頭痛や正頭痛が常にあり、風寒に当たると痛みが激しくなる状態(頭風)や、顔面神経麻痺などに用いる。
【実践的な加減方】
- 寒さが脳に伏している偏頭痛(寒伏于脳):川烏の粉末を酢で調合し、痛む場所に塗布する。
- 理由(病機・治方):局所の風寒を強力に散らし、痛みを速やかに鎮めるためである。


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