『経方方証縦横』における小青龍湯の弁証要点、仲景方論、注家方論、医案選録についてまとめる。
臨床応用における要点
本方の臨床応用における要点は以下の通りである。
適応と基本効能
本方は外寒内飲を治療する良方である。表寒内飲の証だけでなく、寒水が内に蓄積して表寒がないものにも適用できる。臨床上、寒飲による咳喘の証であれば、表証の有無にかかわらず使用可能である。
具体的な使用目標(弁証要点)
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咳嗽、喘息があり、清稀(サラサラした)な痰が多い。
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悪寒があり、特に背部に明らかな寒冷感がある。
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干嘔(からえずき)があり、甚だしい場合は咳によって清水の嘔吐が誘発される。
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舌苔は白滑で、脈は浮緊、または弦滑、細滑、弦細を呈する。
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口渇はないか、または発熱するが一般に熱の勢いは高くない。
※これらの症状がすべて揃っている必要はなく、1、2、4の項目があれば適用となる。
仲景方論
張仲景の『傷寒論』から、以下の2つの条文が引用されている。
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『傷寒論』第40条:「傷寒、表不解、心下に水気あり、乾嘔、発熱して咳し、或いは渇し、或いは利し、或いは噎(むせ)び、或いは小便不利、少腹満し、或いは喘する者は、小青龍湯之を主る」
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『傷寒論』第41条:「傷寒、心下に水気あり、咳して微喘し、発熱して渇せず、湯を服し已って渇する者は、此れ寒去って解せんと欲するなり。小青龍湯之を主る」
注家方論(歴代の注釈家による考察)
6名の医家が、本方の生薬の配合と水寒を散らすメカニズムについて考察している。
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方有執(『傷寒論条弁』)
風寒の表が不解なのを桂枝・麻黄・甘草で解し、水寒が相搏つのを乾姜・半夏・細辛で散らすと説明している。水寒を散らそうとする一方で肺が収まろうとするのを、芍薬・五味子の酸味で肺の逆気を収めるとし、「小青龍」という名称は龍が雲を起こし雨を降らせるように水寒を散らす働きに由来すると述べている。
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許宏(『金鏡内台方議』)
麻黄を君、桂枝を臣とし、芍薬で営を巡らせて表邪を散らし、乾姜・細辛・半夏を使い水気を行らせて嘔咳を止める構成であると分析している。五味子の酸味で肺の逆気を収め、甘草の甘味で調和させていると解説している。
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徐霊胎(『傷寒論類方』)
本方は専ら水気を治す処方であるとしている。汗は水の類であり、肺は水源であるため、邪汗が尽きずに肺胃の間に停滞した有形の病には一味の発散薬では除けないとし、微に入り細を穿つ神剤であると高く評価している。
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張錫駒(『傷寒直解』)
麻黄・桂枝で未解の表を散らし、芍薬で経気を疎し、甘草・乾姜で中土を助けて水邪を制すると解説している。半夏や細辛は陰から陽に達して水気を昇散させ、五味子で水寒を透達させるとし、東方の初生の木、潜蔵し始蟄する龍のように、蓄聚した水を泄するため「小青龍」と名付けたと述べている。
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王子接(『絳雪園古方選注』)
大青龍湯が里熱を治すのに対し、本方は太陽の表裏倶寒を治すものであると違いを明確にしている。麻黄・桂枝に加え、芍薬の収で表を散らす猛烈さを抑え、乾姜・五味子で太陽の気を摂し、細辛・半夏で少陰に深く導き水寒を温散させると指摘している。発汗を欲しない意図があり、陽剤でありながら陰を斂める作用を持つと分析している。
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陳修園(『長沙方歌括』)
太陽の表が不解で里水を動かした状態に対し、麻黄・桂枝で表邪を去り、細辛で里水を行らせ、乾姜で胸の満を散らし、半夏で上逆の気を降ろす構成であるとまとめている。五味子と芍薬の酸苦を下行させ、甘草で緩めて薬力を周到にし、邪気と水飲を一掃すると解説している。
医案選録(名医の臨床カルテ)
この項目では、慢性喘息や内飲が外風を招いた重症例に対する3つの臨床例が紹介されている。
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呉鞠通の医案(内飲が外風を招いた喘満・短気)
26歳の酒を好む患者。脈が弦細で沈、喘満して息切れし、脇から腰にかけて痛み、汗があり、舌苔が白滑で厚い状態であった。悪風寒があり、寄りかかって息をし横になれない(倚息不得臥)ことから、「内飲が外風を招いた病」であり、小青龍湯から麻黄・細辛を去るべき証であると診断し、桂枝、乾姜、杏仁、炒白芍、生姜、半夏、炙甘草、制五味、旋覆花を与えて治療した。
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呉佩衡の医案(妊婦の慢性喘息)
25歳の女性(妊娠4ヶ月)。14年来の慢性喘息を患い、風寒が肺胃に伏し、久咳により肺腎の気が虚し、寒湿痰飲が阻遏している状態であった。小青龍湯に附片を加えた処方を2剤与えたところ、大量の清稀な白痰を吐き、咳喘や胸の苦しさが軽減し睡眠や食欲も改善した。その後、四逆湯・二陳湯に麻黄・細辛・桂枝などを合わせた処方で調治し、喘息は治癒して無事に出産に至った。
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『湖南省老中医医案選』の医案(誤治による小児の昏厥)
7ヶ月の男児。大きく口を開けて喘ぎ、喉の痰鳴、無汗で皮膚が灼熱している状態であった。表寒外閉・内挟飲邪と診断し、小青龍湯を与えて一旦好転した。しかしその後、別の医師が寒涼薬(葶藶、大黄など)を与えたところ、気喘が急になり手足が氷冷し、両目が上転して昏迷状態に陥った。これは表寒が去らぬうちに寒涼薬で里寒が生じ、痰水が結びついてしまったためと判断し、再び小青龍湯に烏頭・附子を加えた処方を与えたところ、1剤で気が平らぎ熱も退き救命された。


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