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小陰旦湯を経方医学で読む

漢方医学

それでは条文を挙げる。

小陰旦湯

治天行身熱、汗出、頭目痛、腹中痛,乾嘔、下利者方。
黃芩三兩芍藥三兩生姜二兩,切 甘草二兩,炙大棗十二枚
右五味,以水七升,煮取三升,溫服一升,日三服,服湯已,如人行三四里時,令病人啜白漿一器,以助藥力,身熱之自愈也。

条文意訳
以下のような人を治す。

治天行身熱
外感病でカラダが暑い

汗出
汗が出る

頭目痛、腹中痛
そのまま。

乾嘔
吐き気、または嘔吐(出るものない)

下利者
下痢

経方医学において方剤の構造は黄芩湯加生姜である。

経方医学の黄芩湯の条文は以下の2つ。

傷寒論
 172条 太陽与少陽合病,自下利者,与黄芩湯。若嘔者,黄芩加半夏生姜湯主之。
 333条 傷寒脈遅,六七日,而反与黄芩湯徹其熱,脈遅為寒,今与黄芩湯復除其熱,腹中応冷,当不能食,今反能食,此名除中,必死。

 但し『外台』黄芩湯:治乾嘔下利であるが、傷寒論の配薬とは異なるので省略する。

 症状から比較する。

共通 熱、下痢、(乾)嘔。
小陰旦湯のみ 発汗、頭目痛、腹中痛
黄芩湯のみ ない

 配薬の差としては黄芩湯に生姜を加えたのが小陽旦湯である。
下痢症状に関しては傷寒論では自下痢とあるのに対して、輔行訣では単に下痢である。
  経方医学4p204では小腸にある邪に対して、患者さんの自己治癒作用で下痢によって治すと言う内容が記されている。

 病機を考えると、少陽が基本、つまり膈に邪が存在することが基本になっている。その上で発汗するとなると、往来感熱による発汗そして身熱ということになる。胃気は不守で上逆して直達路から頭痛が出現する。また乾嘔が出現する。乾嘔については経方医学1 p142に上逆が乾嘔を引き起こす病機が書かれている。

 腹中痛について、胃気の供給不足は小腸絡をきたし腹中痛が出現する(経方医学2p20)。小陰旦湯の場合膈熱が想定されるので小腸絡不通は胃気低下以外に膈熱が小腸絡の不通をきたしていることを示唆している。

 病機をまとめると、以下の通りになる。

 素体は胃気が低下している。外邪が侵入して現在少陽にいて化熱している。胃気が低下しているなりに膈にいる邪を捌くために鼓舞され発熱する。膈は一時的に疎胆されて発汗(その後また膈不利して発汗は消失。往来寒熱状態と私は愚考する)。さらに胃気不守で上逆して頭痛や乾嘔。膈熱が小腸に伝わり小腸絡が不通となり腹中痛を来す。

 治方を経方医学で察すると以下の通り。

 膈熱に対して柴胡を使いたいが輔行訣の思想では柴胡はあまり使われない。代わりに本方では黄芩をしようして膈熱を冷まして疎胆、小腸に伝わる膈熱は収まることで腹痛は消失。生姜で胃気を高め甘草、大棗でまた胃気を高めて守胃する。上逆は収まり頭痛、乾嘔は収まる。芍薬で下焦へ胃気を増加させて小腸絡の絡不通を治す。

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