香蘇散エキス剤に関する知識は殆どアップデートしていなかった。
20年以上前に初めて香蘇散を使った時以来、全くだ。
これではWindows95からアップデートしていないようなものだ。OSとしては成り立たない。
私の場合、香蘇散はお年寄りで軽い風邪の方を目標に処方していた。
特に漢方医学的な所見を取らず、問診、というか愁訴だけで処方していた。
そして処方した結果は効いたり、効かなかったりした。
理由はどうしてこれが効くのかがよく分からなかったからだ。それは恥ずかしながら今もピンとこない。
実は経方医学で読み解いても、私の能力不足のため、どうも本来の効能の一部しか説明できないもどかしさがつきまとう。方意の真の理解にはほど遠い。
配薬は蘇葉、香附子、陳皮、甘草、生姜である。和剤局方の原法は葱白つまり弱い桂皮のような役割の生薬(経方薬学p68)が加わる。
蘇葉は宣散薬である。発汗して解表し健胃薬でもある(漢薬の臨床応用 中山医学院 編 神戸中医学研究会訳・編 医歯薬出版株式会社p23)。
香附子は疎胆作用があり、調経止痛。子宮の収縮状態を弛緩するという(漢薬の臨床応用 中山医学院 編 神戸中医学研究会訳・編 医歯薬出版株式会社p220)。
他陳皮は橘皮の古いの(経方薬論p31)で、下方向に行気して化痰する。甘草は守胃、生姜は胃気を鼓舞する(引用略)。
いつも思うのだげど、感冒ならば、あるいは情緒不安定ならばもっと他の方剤で良いのは?、と思えてしまっていた。
ただ、ぱらぱらと古典に生きるエキス漢方方剤学を読んでいたら、幾つか気になるキーワードを見つけた。
ええ?そんな症状まで治るのか?なんていうのはどうも本気に受け取れない。それ以外のもっと抽象的な部分が気になった。
「内外の両感の症(証ではない)を治す(古典に生きるエキス漢方方剤学 小山誠次著 メディカルユーコン p303)。
あるいは多くの古典で他方剤との加減。例えば小柴胡湯との合剤で柴蘇飲(鞭を振り下ろす)古典に生きるエキス漢方方剤学 小山誠次著 メディカルユーコン p306)。
そして何より「消化管を順方向に蠕動を促進する(古典に生きるエキス漢方方剤学 小山誠次著 メディカルユーコン p301)」と言う1文だ。現時点で恐らくこれが最も腑に落ちる。
現時点での私の理解は、香蘇散を基本骨格に、必要に応じて加減していくのが良いと思う。強調すべきは、宣散?胃脾?、化痰?。それに応じて麻桂や半夏、貝母などを加えていくというのが良いのだろう。
香蘇散が創薬された当時はそこまで深く考えていなかったかも知れない。その後、幾人もの医師に処方され、加減されて工夫する方法、適応症がまとめられたのだ。
それにしても相変わらず「古典に生きるエキス漢方方剤学」は各種古典からの引用が素晴らしい。
原法を知るのは大切だ。そしてそれと同じ位、上手く方剤の効能を説明できる古典や治験例もとても貴重だ。
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