毎日午前7時にブログ更新

経方方証縦横に学ぶ柴胡桂枝湯の弁証要点、仲景方論、注家方論、医案

漢方医学

柴胡桂枝湯について、『経方方証縦横』の記載に基づき「弁証要点」「仲景方論」「注家方論」「医案」を詳しくまとめる。

1. 弁証要点
基本病機と適応:本方は太陽病(表証)と少陽病(半表半裏証)が同時に存在する「太陽少陽合病」に適応する。太陽・少陽の症状がいずれも軽微(俱微)であるため、治療においては桂枝湯と小柴胡湯をそれぞれ原量の半分ずつ合わせた合剤として用いる。
多才な臨床効能:本方は表裏を和解し、内外を通達させ、気のめぐり(気機)を調暢し、舒肝和胃(肝気の滞りを和らげて胃の働きを整える)、調和肝脾などの優れた効果を併せ持っている。そのため、風邪の長引きだけでなく、自律神経失調症や消化器疾患など臨床応用が極めて広範である。
類似処方(桂枝去桂加茯苓白朮湯・桂苓五味甘草湯など)との鑑別:本方は、気の上衝や中焦の不和による複雑な症状を解決する力を持ち、表証を残しつつも裏に病機が及んでいる状況に広く対応する。
2. 仲景方論
張仲景の『傷寒論』に記載されている以下の条文が、本方の主治となる。
『傷寒論』第146条:「傷寒六七日、発熱微悪寒、支節煩疼、微嘔、心下支結、外証未だ去らざる者は、柴胡桂枝湯がこれを主る」。
3. 注家方論(歴代注釈家による考察)
歴代の医家たちは、桂枝湯と小柴胡湯を半分ずつ組み合わせた「双解(表裏を同時に解く)」の絶妙なバランスについて以下のように論じている。
柯韻伯(『傷寒附翼』): 桂枝湯は「表を解すること」に重きを置きつつ微かに裏を清し、柴胡湯は「裏を和すること」に重きを置きつつ微かに表を散じる。本証は、発熱・微悪寒という太陽の表証(外証)がまだ去っておらず、同時にみぞおちがわずかにつかえる(心下支結)という少陽の裏証を兼ねている、いわば「太陽少陽併病の軽きもの」**である。悪寒も発熱も「微」であり、関節の痛みも「煩疼」、嘔吐も「微嘔」とすべてが軽いため、桂枝の半量で太陽の未解の邪を払い、柴胡の半量で少陽の微結を解する。病機がすでに裏に現れ始めているため、処方名において柴胡の文字を桂枝の前に冠し、両陽を優しく双解する軽剤としている。
王子接(『絳雪園古方選注』): 桂枝湯は解肌を主とし、柴胡湯は和里を主とする。仲景はこの二方を表裏のバランスを取る基準(権衡)として、最も好んで臨機応変に用いた。本証は、関節がしくしく痛み太陽の邪が残っている一方で、嘔気やみぞおちのつかえ(支結)といった少陽の病機が強くなっている状態である。ここで柴胡を冠することで、少陽の微結を開き、他に余計な開結薬を使わずに済ませている。人参、白芍、甘草の組み合わせで営気を安定させて保護する構成は、まさに**「軽剤を用いて(みぞおちの)結びを開く(軽剤開結)法」であると評価できる。
陳修園(『長沙方歌括』): 傷寒六七日(一経が一巡し、再び太陽が主気となる時期)において、太陽の気が胸膈からスムーズに出入できず、経脈や支絡に結ぼれて滞る病態である。そこで桂枝湯によって発熱悪寒を除き、小柴胡湯を借りて、太陽の気が少陽の「枢機」を介して外へとスムーズに転出して解けるようにしているのだと解説している。
4. 医案選録(名医の臨床カルテ)
本方は風邪の誤治から、肩周りの激痛(五十肩)、長引く原因不明の高熱まで、非常に幅広い疾患を鮮やかに解決したカルテが残されている。
趙守真の医案(誤下による便秘・往来寒熱・関節痛): 25歳の男性。風邪(感冒)が治りきらないうちに数日間大便が出なくなった。腹痛や腹満感(お腹の張り)はなかったものの、前医たちが「便秘」という主訴ばかりに目を奪われ、大黄や芒硝、備急丸などの激しい下剤を繰り返し与えた。その結果、下せば下すほど便は通じなくなり、病状は悪化してしまった。趙守真が診察すると、脈は浮でわずかに弦。口苦、脇痛があり、食事は摂れず、寒熱(往来寒熱)が毎日生じて2ヶ月間一度も汗をかいておらず、頭や体の痛みに呻吟していた。趙守真は、お腹が張っていないことから胃腸に硬い便の塊(燥屎)はなく、発熱悪寒という太陽表証が始終存在しているため「下してはならない表証」であると見抜いた。正気が強いために邪が内陥せず、表裏で邪正が相持しているため、無理に下したことで気が閉塞して便秘になっていたのである。そこで太陽の頭身痛・寒熱(桂枝証)と少陽の口苦・胸脇満(柴胡証)を同時に解決するため、柴胡桂枝湯に防風を加えた処方を投与した。服薬後に温かくして微汗をかかせたところ病状は劇的に和らぎ、もう1剤服用させると、大便・小便ともにすっきりと暢通し(外の滞りを解けば、内の便路も自ずと通るという理)、完全に全快した。
劉渡舟の医案(左肩から背中にかけての激痛・五十肩): 43歳の男性。左の肩から背中にかけて引きつるように激痛し、左腕が上がらず、寝返りも打てず、痛みの激しい時は歩くことすら困難であった。鎮痛剤も一時しのぎにしかならず、病院で「肩周炎(肩関節周囲炎)」と診断され苦しんでいた。自訴を聞くと、胸脇が張って苦しく、口苦があり、時々ため息をつき、食欲がなく、時々汗が出て背中が突っ張る感じがしていた。脈は弦、舌苔は薄白であった。劉渡舟はこれを「太陽少陽の二経の気が鬱滞して不通となっている状態」と弁証し、両経の邪を払い、少陽を和して営衛を調和させるために、柴胡桂枝湯に片姜黄を加えた処方を投与した。これを3剤服用しただけで背中の痛みは激減して腕が自由に上がるようになり、さらに3剤で諸症状がすっかり消退し完治した。
魏龍驤の医案(1ヶ月以上続く高熱とリンパ節腫大): 15歳の男児。39℃以上の高熱が1ヶ月以上も続き、特に午後になると熱が高くなっていた。熱が出る時は必ずわずかにゾクゾクと寒気がし、汗が出ても熱は下がらず、口は渇くものの水を飲みたがらなかった。また、左耳の後ろに鶏卵大から大豆大のリンパ節がいくつも腫れて連なっていた。病院では「反応性リンパ球増多症」と診断され、抗生物質は無効、ステロイドで一時的に熱を下げたものの再発していた。魏龍驤は、発熱時に「微悪寒」を伴うことから、発熱がこれほど長引いていても依然として「表邪」が去りきっていないこと、そして耳の後ろ(少陽経の走る部位)のリンパ節腫大や胸脇のつかえ感から、邪が半表半裏の少陽に盤踞していると判断した。そこで太陽の未解の表邪を解し、少陽の微結を和らげるために柴胡桂枝湯を処方したところ、6剤服用後にじんわりと微汗をかき、1ヶ月以上続いていた高熱がホロリと下がり、自汗や耳の後ろの腫れも日を追うごとに消失して、見事に根治に至った。

YouTubeもやってます。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました