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『経方方証縦横』に学ぶ桂枝湯の弁証要点と仲景方論

漢方医学

経方医学における桂枝湯類は多岐にわたる。本書の第一章「桂枝湯類方」では、基本となる「桂枝湯」を中心に、「桂枝加葛根湯」「桂枝加厚朴杏子湯」「桂枝加附子湯」など、臨床上極めて重要な以下の処方が網羅されている。

  • 桂枝湯類方の主要処方
  • 桂枝湯、桂枝去芍薬湯、桂枝加葛根湯、桂枝加厚朴杏子湯、桂枝加附子湯、桂枝去芍薬加附子湯、桂枝加芍薬生姜人参新加湯、桂枝麻黄各半湯、桂枝二麻黄一湯、桂枝二越婢一湯、桂枝甘草湯、桂枝甘草龍骨牡蠣湯、桂枝去芍薬加蜀漆牡蠣龍骨救逆湯、桂枝加桂湯、桂枝加芍薬湯、桂枝加大黄湯、小建中湯、甘草附子湯。

本稿では、その中核である「桂枝湯」の弁証要点と『傷寒論』に基づく方論について解説する。

1. 桂枝湯の弁証要点

桂枝湯を臨床で応用する際、押さえるべき要点は以下の5点に集約される。

  1. 経方の代表的方剤(群方の首)
  2. 張仲景が定めた200余の処方の中でも、桂枝湯は筆頭に置かれている。これは本方が他の処方に比して治療効果が高く、応用の幅が極めて広いことを示している。
  3. 営衛の調和と発汗・止汗作用
  4. 営衛(身体の防御機能と栄養供給のバランス)を調和させることで、邪を汗とともに排出しつつ、無用な汗を止める二面性を持つ。自汗や盗汗、下痢、虚寒性の胃腹痛、妊娠悪阻(つわり)等に有効である。
  5. 血脈の温通
  6. 血脈を温めて巡りを促す作用がある。月経の遅延や閉止、月経時の腹痛、身体の痛みなどの治療に用いられる。
  7. 広範な臨床応用
  8. 外感証に対しては「解肌(筋肉の緊張を解く)」と「営衛の調和」を担い、内傷証に対しては「気血の調和」を図る。外感の有無に関わらず、営衛不和や衛強営弱の病態があれば広く適応となる。
  9. 配合比の厳守
  10. 本方を使用する際、桂枝と芍薬は必ず「等量」でなければならない。この配合比を違えると、営衛を調和する本来の作用が損なわれる。

2. 仲景方論:条文から見る適応と禁忌

『傷寒論』の条文には、桂枝湯の適応、あるいは慎重な判断を要する状況が詳細に記述されている。

  • 典型的な適応(太陽中風)
  • 太陽病で、頭痛、発熱、自汗(自然に汗が出る)、悪風(風を嫌う)がある者に主治する(第12条、13条)。また、脈が陽浮・陰弱で、鼻鳴りや干嘔を伴う場合も適応となる。
  • 誤治後の対応と「気の上衝」
  • 太陽病を下法(下剤)で誤治した後、気が上向きに突き上げる「上衝」が見られる者には桂枝湯を与えてよい。しかし、上衝がない者には不適当である(第15条)。
  • 禁忌と慎重投与
  • 本来「解肌」のための薬であるため、脈が浮緊で汗が出ない実証(麻黄湯証)には用いてはならない(第16条)。また、日常的に飲酒する「酒客病」の者に与えると嘔吐を引き起こす恐れがある(第17条)。
  • 他経病における応用
    • 陽明病: 脈が遅く、多汗で微悪寒がある場合や、日午後に発熱(日晡発熱)し脈が浮虚である場合は、桂枝湯で発汗させるのが適している(第234条、240条)。
    • 太陰病: 太陰病であっても脈が浮を呈する場合は、表を解するために桂枝湯を用いる(第276条)。

下痢・身体痛: 下痢と腹満に身体痛を伴う場合、まずは四逆湯で裏を温め、その後に残った表証を解するために桂枝湯を投与する(第372条)。

 

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