小補肝湯の症治療対象症状は肝病において以下の通りである。
治心中恐疑,时多恶梦,气上冲心,越汗出,头目眩晕者方
意訳すると、心の中が恐れ疑い、悪夢に苛まれ、心を上衝する。眩暈でぼうっとする者ということになる。
肝気虚の症状は、経方医学では胆気虚の症状になる。肝気が虚せば胆気も虚す( 江部洋一郎 THE MAMPO Vol9, No3, May 1991 p2-17)。
また胆気不足の一般症状は多彩であり、同上から引用すると「不安感・不眠が主なものであり、疲れやすい・口渇・口苦・眩暈・動悸・胃のもたれ・腹脹など、多彩なものがある」とある。
いずれ胆の疏泄収斂ともに失調しかつ、それに続発して膈不利を来していることである(経方医学1 p33)。そうして失調している程度と影響する臓腑への対応がこの大小補肝湯の役割であるといえる。
条文を振り返る。
「治心中恐疑」
怖くてびくびくしている状態である。つまり「人将捕之」のことである。胆気不足について江部洋一郎氏の文献を引用する。
「靈枢」邪気臟腑病形化「胆病者,……,心下澹滄,恐人将捕之…….」とあり,「素問」脈要微論にも「肝病者、 … 善恐 , 如人将捕之」とある。
つまり想定される方は胆、肝はいずれ、あるいはどちらも不足している状態といえる。少なくとも胆気不足が想定される(江部洋一郎 江部洋一郎 THE MAMPO Vol9, No3, May 1991 p2-17)。
「时多恶梦」
心包に何らかの条件で熱を帯びると夢を見ることを条文に現れる。経方医学では腎気不足によることが示されている(経方医学2p26)。腎では無くて胃気が鼓舞されるなどして強烈に熱を帯びると心煩、讝語やあるいは狂とは異なる(経方医学2p26)のでそれとは異なる。
「气上冲心」
膈不利のため胃気が腎気に向かい腎気の上衝を示している。
「越汗出」
胆気不足による腠理の開閉異常により、発汗が強い。
「头目眩晕者方」
膈不利により胃気による上逆、腎気の上衝が頭顔部に向かう。
以上のことから経方医学における病機は腎胆不足(江部洋一郎 THE MAMPO Vol9, No3, May 1991 p2-17)兼肝鬱熱であると判断した。
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