竜胆瀉肝湯は以前から馴染みが深い。なんか名前がかっこいいから。しかし正直方意が良く分かっていなかった。
よって、病名漢方、つまり症状に対しての縮尿に少し使う程度であった。
そんなわけでちゃんと見直そうと考えた。
古典に生きるエキス漢方方剤学(小山誠次著 メディカルユーコン p1146)を読むと、薬味数に幅がある。最も少ない「薛氏医案(薛はせつと発音で良いのかな)」方で9味であった。ツムラはこれに当たる。
配薬は以下の通りである。
龍胆、山梔子、甘草、木通、地黄、当帰、黄芩、沢瀉、車前子
傷寒論、金匱要略の処方ではない。
しかし、配薬の多くは経方薬論に掲載されている。生薬の薬効を見直す。
竜胆: 別録 胃中の(伏)熱を除いたり、熱性下痢を去る。肝胆気を増やし驚惕(驚き恐れ)を止める(江部洋一郎 (著), 和泉正一郎 (著), 内田隆一 (著) 東洋学術出版社p34)。
山梔子: 清熱除煩、清熱利湿 下焦に関連するとすると小腸の熱に対するものとなる(同上p49)
沢瀉: 肌、腹(水)、心下の水質を捌き小腸膀胱より尿として排泄(同上p76)
当帰: 温血、血を巡らせる。補血する(同上p83)。
山梔子: 清熱除煩。清熱利湿。竜胆瀉肝湯では黄疸病に対する小腸の熱に対する効果を期待(同上p48)。
地黄: 滋陰、補血(同上p52)
黄芩: 肺痰、膈、小腸、腠理の熱を清熱する(同上p11)
木通: 降火利水、通乳(漢薬の臨床応用 中山医学院 編 神戸中医学研究会訳・編 医歯薬出版株式会社p148)
車前子: 利水、通淋、止瀉、明目、去痰止咳(同上p153)
「薛氏医案」竜胆瀉肝湯の適応は男女別に記載があるという。腫れと痛み、小便渋滞に適応があると解釈した(古典に生きるエキス漢方方剤学小山誠次著 メディカルユーコンp1149)
配薬を見ると苦労が目につく。三焦にわたり清熱利水。血枯を意識して当帰、地黄が配薬される。甘草は滋陰あるいは和薬であろう。
対象疾患はおそらく痛みを伴う尿路疾患なのだろう。或いは発熱も伴うかもしれない。
診察して、必要に応じて加減すればいい。例えば湿熱が強ければ黄連や連銀、柴胡も加えて良いだろう。血虚が強ければ四物湯方意をかませる。利尿を強くするため猪苓なんかもいい。
この方剤で面白いのは下焦の症状なのに上焦の肺や胸、隔を清熱しにかかっていることだ。
私たちに、小便渋滞の原因に肺を忘れるなと教えてくれるのだ。
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