弁証の要点
本方は、温通の力を持つ桂枝湯から芍薬を去り、陽気を補う附子を加えた処方である。通陽散寒(陽気を通じさせ寒さを散らす)という基礎の上に、陽気を温める附子の力が加わっている。そのため、さまざまな原因によって生じる「心胸の陽気不足」に、寒さによる滞りである「寒閉気鬱」を兼ねた病証に広く適応する 。
臨床における具体的な活用指標は以下の通りである。
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適応体質と症状: 主に、もともと陽虚(エネルギー不足で冷えやすい)の体質を持つ者が風寒の邪に感染した場合や、自汗(じわじわと汗が出る)があり、背中や手足に冷えを感じる(背寒肢冷)者に用いられる 。
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芍薬を去る理由: 胸のつかえや息苦しさ(胸満悶)がある場合、芍薬の持つ「酸斂(引き締める性質)」が陽気の回復を妨げる可能性があるため、これを除いて通陽の力を強めるのが本方の特徴である 。
仲景方論
『傷寒論』第22条には、本方の主治について以下のように記されている。
「若微悪寒者,桂枝去芍薬加附子湯主之」 (もし、わずかに悪寒(微悪寒)する場合には、桂枝去芍薬加附子湯がこれを主治する)
これは、誤下(不適切な下法)などによって胸の陽気が損傷し、さらに陽虚が進んで悪寒が現れた状態を指している 。単なる「桂枝去芍薬湯」の証(脈促・胸満)に「微悪寒」が加わったとき、より深い陽気の温補が必要となるため、本方が選ばれるのである 。


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