小螣蛇湯(しょうとうだとう)である。これは傷寒論でいうところの大承気湯加甘草去大黄である。ぱっとみ承気湯類と言いたいのだけど、大黄がない承気湯は馴染みがない。
治天行熱病、胃気素実邪気不除、腹满而喘、汗出不止者方。
枳実三両厚朴甘草芒硝二両
右四味、以水六升、煮取二升許、去滓内芒硝、溶巳頓服之。
適応を意訳する。
下記のような方を治す。
治天行熱病
外感病で熱病。
胃気素実邪気不除
胃気は元々実していて、邪気が去らず。
腹满而喘
腹満と喘鳴がある。
汗出不止
汗が止まらない方。
経方医学で察すると、病機として関連した条文の病機は以下の通りである。
元々胃実家であるも邪が胃にまで到達。六病位では陽明になる。陽明病で腹満はともかく喘まであるのは承気湯類である。
関連条文としは「傷寒論242喘冒不能臥者、宜大承気湯」と「傷寒論254」の腹満。
242条では、大腸腑気が燥屎のため通じない場合、肺から胸膈心下への肺の粛降が出来ずに喘が出現する(経方医学5p42)。また256条では大腸腑気が通じず腹痛、腹満が生じる(経方医学5p46)。芒消については経方薬論p103効能について化痰、化似痰非痰とある。
では本剤が想定する病機を経方医学で察する。
元々胃に食物などの内容物がある状態でその消化過程で、外邪が侵入。そこで胃熱が高まることで、熱を帯びる。熱により本来腐熟を受けて小腸で精昇降濁して栄養吸収、糞尿排泄へ向かうところ、熱により、精にもならず、さりとて糞尿へもなれない似痰非痰となっている状態で詰まっている。肺から胸膈心下への肺の粛降が出来ずに喘が出現し、大腸腑気が通じず腹痛、腹満が生じる。胃気は元々強く、更に胃気が鼓舞し続け、胃心下下膈を通じて肌気に熱を帯び続け、汗が出る。
治方は、胃気を守胃して肌気から枳実にて還流。厚朴で胃気を下に降ろす。芒消にて似痰非痰を去る。
瀉剤を大黄を含めず、芒消のみというのはとても面白い。湯液経は想像以上に自由な発想をする。
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