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医学哀中参西録の小青竜湯とその加減を経方医学で読む2

雑記

前篇はこちら。「喘」の配薬シリーズでその中に小青竜湯加減が含まれている構造だ。その喘の症状定義は気管支喘息に限定されていない。もっとひろく、ぜーぜーいう症状を指す。

そして、一貫して麻黄を去ることを主張している。宣散薬は桂皮のみだ。確かに呼吸器症状の方に傷寒のごく初期を除いてがさっと多量の麻黄を入れることはほとんどない。喘息を含めて麻黄を入れるとしたら3g程度にして、残りは黄耆を15g程度にしている。麻黄に近いしかし弱く性は温性ではない宣散薬として蝉退を(5)で使っている。

麻黄の温性への畏れと、実際に去っても臨床上の有効性に問題がなかったからだろうと愚考していr。その臨床知見に私も少しあやかろうと思う。

では参西録p14-15に記載している順番に加減を書いていく。

(3)喘しているが呻吟にはなっていない。肩で息をすることもない。吸気し難く、呼気はし易い。脈は虚無力又は兼数。張先生創薬の滋陰清燥湯(滑石、甘草、芍薬、山薬)が良いという。配薬は小青竜湯から離れている。

喘とは言え、こちらも気管支喘息ではない。例によって麻黄を去っている。吸気が困難であるので、芍薬で粛降させる。察するに経過が長く余熱未清であり、脈は弱いが、数がある。滑石で清熱利水するも山薬でちゃんと滋陰する。滑石が有効であることから湿熱はあるのだろう。その場所は恐らく肺や胸。普段使いできる上手い処方だ。マネしたい。

(4)これは小青竜湯加減。喘症状が弱く呼吸するとき音もせず、脈は実で脈拍は不数。この実というのが邪の事か素体のことかはこの文章では判断はできない。但し呼吸器症状が軽症のならば素体が強いのだろう。今でも亡く麻黄を去り、杏仁を加えた加減だ。桂皮と石膏で木防已湯のごとく、固い心下(あれば)を突破できる。数滑脈を伴えば更に知母で清熱する。喀痰を捌くためにも滋陰しながら下方向のベクトルの知母は適切。

(5)喘症状が弱く、脈が洪滑脈で浮。脈外に肺気が流れている。舌が白厚胸中煩熱となると有形の熱。胸に湿熱がある。張先生創薬の寒解湯(石膏、知母、連翹、蝉退)で発汗させる。知母石膏で粛降、蝉退で宣散、連翹で清熱させる。できれば甘草を入れたいところだ。

(6)喘して発熱、脈証から実熱が明らかで数。重按して無力。

白虎加人参湯以山薬代粳米湯去知母加地黄茅根と配薬している。方剤も合わせて察すると病邪は胃に到達している。一見肺病に見えるが、そうではない。呼気吸気のしずらさに付いての記述がない。胃気が鼓舞され胸そして肺に及び、さらに心心包にも宣散している。その上陰が消耗されて脈証に按じて無力とある。よって配薬を再度見直すと胃を清熱して人参で守胃させる。粛降障害は意識しなくて良いので知母を去って下方向のベクトルを避けている。地黄で滋陰清熱して茅根で清熱利水している。

(7)喘して結胸なら大小陥胸湯、張先生創薬の蕩胸湯(栝楼仁、代赭石、紫蘇子、芒消)。小青竜湯ではない。大小陥胸湯の区別なく蕩胸湯を使いたいな。代赭石が保険で使えないのが辛い。

雑然としているので次回は症状をまとめる。

注:参西録とは「中医臨床のための医学哀中参西録 第1巻 傷寒・温病偏 神戸中医学研究会編訳 東洋医学出版社」を指す。

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