輔行訣には五蔵に大小の瀉、補する方剤の証と治方が記述されている。
冒頭の肝病について小瀉肝湯、大瀉肝湯、小補肝湯、大補肝湯を経方医学で解釈した。ここで肝病における解説を読み解く。
辨肝脏病证文并方
肝虚则恐,实则怒。
肝病者,必两胁下痛,痛引少腹。虚则目䀮䀮无所见,耳有所闻,心澹澹然如人将捕之。气逆则耳聋,颊肿,治之取厥阴、少阳血者。
邪在肝,则两胁中痛。中寒,恶血在内,则胻善瘛,节时肿。取之行间以引胁下,补三里以温胃中,取耳间青脉以去其瘛。
肝虚则恐,实则怒。
肝虚は恐れ、肝実は怒り。但し症状としては判別不可である。
肝病者,必两胁下痛,痛引少腹。
肝虚、肝実に関わらず、脇痛と腹痛となる。
虚则目䀮䀮无所见,耳有所闻,心澹澹然如人将捕之。
肝虚の場合、視力聴力障害。「心澹澹如人将捕之」はつかまえられるのではないかとおどおどした感じこれは後述する。また頬が腫れた状態がある。
さらに「人将捕之」 については大きなヒントになる。まさに胆気不足の1症状として捉えることができるのだ。
胆気不足について江部洋一郎氏のコメントを引用する。
「「靈枢」邪気臟腑病形化「胆病者,……,心下澹滄,恐人将捕之…….」とあり,「素問」脈要微論にも「肝病者、 … 善恐 , 如人将捕之」とある(江部洋一郎 THE KAMPO, Vol.9, No.3, May 1991 p2-17)(江部洋一郎経方医学4東洋医学出版社p104)。」つまり想定される方は胆、肝はいずれ、あるいはどちらも不足している状態といえる。少なくとも原発続発の差はあるも胆気不足が想定される。
治之取厥阴、少阳血者。
鍼灸の取穴部位。厥陰、少陽を取穴する。血は穴つまり経穴なのかも知れない。
邪在肝,则两胁中痛。
肝実とは書かず、もはや周知の通り「邪在肝」と肝虚に対となって書かれているのが興味深い。肝虚の場合下、でもこの場合中で、「两胁中痛」とある。肋骨の中つまり脇痛の強い版と思って良い。いずれ膈の病理を反影する(江部洋一郎 経方医学1p86)
中寒,恶血在内,则胻善瘛,节时肿。
突然寒くなったり、悪血がありよく痙攣し、時に浮腫む。これは金匱要略の瘧病で瘧邪である。鼈甲や䗪虫などを使う。しかし肝病においてこの後、症状に対する証も治方も記述がない。これは恐らく陶弘景が不要の処方と判断したのだろう。もしかしたら輔行訣では肝病の中で大小の補肝瀉肝の4処方だけではなくもっとあったのかもしれない。
取之行间以引胁下,补三里以温胃中,取耳间青脉以去其瘛。
これらも取穴部位を示していると思われる。経方医学から離れるので参考にしない。
実際はこの肝病とは?という説明文の後に証と治方が示される、と言う順番で記述されている。
では何故私は読み解く順番を逆にしたのか。
私自身のチャイナ語力が低いから。取穴の意味が鍼灸であることは分かっていたのだけどあやふやだから。翻訳に留まりかねず、文の表面の意味しか分からなかったから。あやふやなことは興味が落ちてせっかくのモチベーションも下がるからだ。
だからまずはデザートを食べることとした。つまり一度各論である小瀉肝湯、大瀉肝湯、小補肝湯、大補肝湯を経方医学で解釈した後再度見直せばまた少し実のある理解があるのではないかと判断したからだった。
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