ある日の午後、一般健康診断の終わり頃のことである。60歳代の女性受診者(患者ではない)が、伏せがちだった顔を上げた。そして、思い詰めた悩みをようやく吐き出すように私に問うた。
「あの、どうやったら痩せられるのでしょうか。やはり30分は運動しないと痩せられませんか?ラジオ体操はしているのですが」
私(Dr.おぐりん家)は我が意を得たりと顔を輝かせた。だってダイエット成功したんだもん。
「運動だけでは痩せられない。マイナスカロリーの状態を作るのが大前提である」
「食べ物だけで痩せられるんですか?」
「痩せること自体は可能である。しかし、そうすると筋肉が栄養素として分解されてしまう。だからこそ、筋肉に一定の負荷をかけなくてはならない」
「どんな運動がいいでしょうか」
「例えばである、ジムに通うのが良いのであるが……」
それから私は、受診者の問いに対して一つずつ、丁寧すぎるほどに答えた。しかし、今思えば受診者は隙を窺っていたのだろう。会話を続けながら、ゆっくりと後ずさりしていくではないか。
「……はい。ありがとうございました」
どうやら、熱が入って話しすぎてしまったようである。
私自身、ダイエットに関する情報が頭の中でまとまりきっておらず、言葉を尽くすことばかりに注力してしまった。結果として、診察時間を無駄に長引かせてしまったのだ。これではまさに「迷惑な医者」である。自分の中で要点をきちんと整理できていない状態のまま、熱量だけで語り続けるのは良くない。
今回の反省を踏まえ、次からは余計な講釈を垂れる代わりにサッと提示できるよう、すべてのダイエットにおいて必須となる「絶対条件」を簡潔にまとめることにした。
ダイエット3つの絶対条件
- マイナスカロリーの状態で、全身の運動をする
- 摂取カロリーよりも消費カロリーが多い状態を作ること。その上で、筋肉が落ちないように全身の運動で負荷をかけることが大前提である。
- 体重測定
- 日々の体の変化を、客観的な数値としてしっかりと把握すること。
- 一生出来る範囲内であること
- これが最も重要である。一時的な無理や我慢ではなく、自分自身の生活習慣として「一生続けられる内容」でなければ意味がない。
今後は、このまとめを記載した名刺を用意し、詳細な解説へ飛べるQRコードを添えておこうと思う。
飛んで火に入る何とやら……とばかりに質問をしてくれる受診者が次に現れたときは、口を動かす前に、そっとその名刺を手渡すつもりである。


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