『経方方証縦横』の資料に基づき、「桂枝去桂加茯苓白朮湯(けいしきょけいかぶくりょうびゃくじゅつとう)」の「弁証要点」「仲景方論」「注家方論」「医案」についてまとめる。
弁証要点
本方の臨床応用における要点は以下の通りである。
- 病機と適応
- 太陽病を誤って瀉下(下剤を投与)した後、水気が外に発散できずに体内に停滞してしまった状態に用いる。そのため、原方(桂枝湯)に水気を逐って小便を利する白朮と茯苓を加えて構成されている。
仲景方論
張仲景の『傷寒論』からの引用として、以下の1つの条文が記載されている。
『傷寒論』第28条
「桂枝湯を服し、或いはこれを下し、なお頭項強痛し、翕翕(きゅうきゅう)として発熱し、無汗、心下満して微痛し、小便不利なる者は、桂枝去桂加茯苓白朮湯がこれを主治する」。
注家方論(歴代の注釈家による考察)
5名の医家が、本方の生薬構成や「なぜ桂枝を去るのか」について考察している。
- 成無己
- 発汗や瀉下を経ても頭項強痛・発熱があるのは邪気がまだ表にあるためであり、無汗・心下満微痛・小便不利は「停飲(水飲の停滞)」によるものだと説明している。桂枝湯で外を解しつつ、茯苓・白朮で小便を利して留飲を巡らせるのだと解説している。
- 方有執
- 桂枝を去り、芍薬と甘草を用いるのは、重く傷ついた陰を収めて裏の虚を補うためであると分析している。生姜・大棗で脾胃を健やかにし、茯苓・白朮で停飲を治すことで、前医の誤治を救う処方であると述べている。
- 王子接
- 本方は太陽の裏水を治す法であると指摘している。すでに「解肌(体表の邪を解す)」の証ではなくなったため桂枝を去り、代わりに苓・朮・生姜で陽を行らせ、芍薬で陰を収める構成であり、これは太陽の邪が裏に入った際に五苓散で表裏両解するのと同じ意義があるとしている。
- 陳修園
- 服薬方法に「小便が利すれば癒える」とある通り、利水に重きを置いているため桂枝を去ったと解説している。桂枝を去っても処方名に「桂枝」と残っているのは、頭痛や発熱といった桂枝証が太陽の「腑」に残っているからであり、水が利けば満も熱も除かれ、頭項強痛も治るとそのメカニズムを説明している。
- 呉謙
- 「去桂(桂枝を抜く)」というのは「去芍薬」の誤りではないか、と独自の問題提起をしている。桂枝を抜いてしまっては、頭項強痛や発熱無汗といった表証をどうやって治すのかと疑問を呈している。
医案選録(名医の臨床カルテ)
この項目では、太陽病の変証に対し、本方を用いて治療した1つの臨床例が紹介されている。
- 陳修園の医案
- 邪気が太陽を傷り、病が寒水の経にあり、頭痛、項強、発熱、無汗、心下痞満、陰々作痛、小便不利を呈した患者のケースである。これは膀胱の気化が行われず、営衛が失調しているため汗が出ない「太陽の変証」であると診断した。下焦から治療を施すべきであるとして本方を適用し、芍薬9g、炙甘草6g、生姜3片、茯苓9g、白朮9g、大棗4枚を用いて治療した。


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