久しぶりに背部に鈍い痛みが走った。単なる筋肉痛とは異なり、背中の奥深くがゴリゴリと不快に痛む感覚である。
興味深いことに、じっとしているよりも階段を上るなどして少し体を動かし、気血を巡らせると痛みがフッと和らぐ。東洋医学において、安静にしていて痛み、動かすと軽減するのは気血の巡りが滞っている証左である。背部を広く覆う「足太陽膀胱経(あしたいようぼうこうけい)」の経絡に沿って、重だるく停滞するこの感覚。おそらく「湿の阻滞(しつのそたい)」によるものだろう。湿邪(しつじゃ)特有の、粘り気を伴う重濁(じゅうだく)した痛みがそこにある。
季節はまさに冬から春への移行期だ。周囲の雪もすっかり姿を消しつつあり、もはや新たに積もるような雪はないかもしれない。そこに雨が降ることで、大気中の湿度がぐっと上がっている。この外気の「湿」が体表から侵入し、太陽経の巡りを詰まらせているに違いない。
本来であれば、今日は定例の筋力トレーニングを行う日であった。しかし、身体のサインに耳を傾け、予定を変更してゆっくりと杖道の稽古を行うこととした。無理をして身体に余計な負荷をかけ、力任せに動かす必要は全くない。むしろ、経絡の滞りをほどくためには、このような時こそ静かで丁寧な動きが求められる。
そこで、先日の稽古で学んだ「打ち込み」の動作を、スローモーションのようにゆっくりと繰り返してみることにした。単に漫然と形をなぞるのではなく、動作のプロセスを一つ一つ細かく分解し、手順のチェックを行う絶好の機会と捉えよう。
杖を構え、振りかぶり、そして打ち下ろす。その一つ一つの動作を、自身の身体と対話をするかのように確認していく。今回とりわけ意識するのは「肩甲骨」の動きだ。
肩甲骨の周辺には、先述の膀胱経のツボ(膏肓など)に加え、「手太陽小腸経(てたいようしょうちょうけい)」が複雑に走り、天宗(てんそう)をはじめとする要穴が集中している。肩甲骨をただの骨の板としてではなく、これらの経絡が交差する要所として捉え、背中全体で滑らかにスライドさせる。胸郭から腕、そして杖へと連動する力の流れを探ることは、すなわち背面に滞った湿邪を物理的な運動によって散らし、気血の通り道を切り拓く作業に他ならない。
今日の目標はゆっくりとした動作の中で経絡の繋がりを意識し、背部に滞った湿をじわじわと発散させるように、本日の稽古を深めていくこととする。


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