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【医学哀中参西録】加味桂枝代粥湯を経方医学で読む

漢方医学

 加味桂枝湯代粥湯は粥を使わない、生薬の配薬だけで発汗を伴う桂枝湯証を治す方剤である。条文を挙げる。

加味桂枝代粥湯

治傷寒有汗

桂枝尖三銭 生抗芍三銭 甘草銭半 生姜三銭 大棗三枚掰开 生黄耆三銭 知母三銭 防風二銭

前溻茶盅、湯服䨱被令一時許、遍身漐漐微以有汗者益佳。不可如水流漓、病必不除。禁生冷黏滑、肉面、五辛、酒酪及臭悪等物。

 ここで「粥」とある。「代粥」だから粥の代わりの方剤ということになる。

 ここで傷寒論における汗の出る傷寒の治療法で桂枝湯が出現する条文の、「粥」部分を見ると以下の通りだ。

(桂枝湯を)服一升。服已,須臾,啜熱稀粥一升餘,以助藥力…

とある。

 つまり、傷寒論条文では、粥をすすることで薬の力を助ける、というのだ。

 張錫純先生は汗を伴う傷寒に対して桂枝湯だけで治るはずが無い。粥を用いないのであれば、黄耆、知母、防風を(つまり加味桂枝湯代粥湯)を投入しろ!という。本剤はまことに面白い方剤なのだ。

 では、桂枝湯に粥を伴わない場合、何が不足するのか。何がだめなのだろうか。

 粥の役割は水穀の津で汗にするという(中医臨床のための医学哀中参西録 第1巻 傷寒・温病偏 神戸中医学研究会編訳 東洋医学出版社p7)。桂枝湯証では素体で胸中の大気が虚損していると汗が外越する機序がある。そこに衛気の虚に乗じて邪が外殻から営にまで入り、営中の津液を乱して外泄して汗となるのだという(中医臨床のための医学哀中参西録 第1巻 傷寒・温病偏 神戸中医学研究会編訳 東洋医学出版社p7)。経方医学において桂枝湯は気虚を伴い皮気から肌気の衛分に邪が入る、としている。しかし営分に邪が入るのならば敗血症と同等となる。よってこの解釈はあり得ない(経方医学1p117)。ここが師匠と張錫純と解釈が異なる部分だ。私は経方医学の解釈にこの点は軍配を上げたい。

 しかし、胸中の大気が虚損すれば宣散が十分出来ず皮気虚になる。そこに邪が入り胃気が鼓舞され肌(と脈外)の衛気が腠理から漏れ発汗する。だから胸中の大気虚損の点はあり得ると思うし、そのような考え方で捉えていなかった(はずい)。

 では粥のかわりの配薬。この三薬で粥を作るわけではない。冗談はさておき、黄耆で大気を昇補、知母で熱を生じやすい黄耆に対して冷ます。反作ですね。防風で営衛を通すのだという(中医臨床のための医学哀中参西録 第1巻 傷寒・温病偏 神戸中医学研究会編訳 東洋医学出版社p 8)。黄耆は胸の大気下陥で大活躍する。防風は内外風を治す(経方薬論p107)。「営衛を通す」賭したら、経方医学で見ると、肺から宣散をうけた衛気が、心心包へ流れていくイメージだろう。この部分は私自身臨床的に実感はない。しかし張錫純先生がおっしゃるのだからそのようなイメージを持ち、今後意識して処方していきたい。

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