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滋陰至宝湯を経方医学で察する

kizami 漢方医学

 このエキス剤はこれまで数回しか処方したことがない。そういえば九州の友人は地域で一番処方していると誇らしくおっしゃっていた。地域差なのだろうか。

原典、配薬及び条文から

原典は和剤局方。
配薬は香附子、柴胡、芍藥、知母、陳皮、当帰、麦門冬、白朮、茯苓、地骨皮、貝母、薄荷、甘草。
 条文の意訳をすると以下の通り。
 全身の障害があり、月経の不調があり痩せている女性に有効。この方剤で月経を整えて、血脈を潤し、虚労を補い元気を奮い立たせる。消化器や心、肺をすこやかにし喉を潤す。頭や目をさっぱりして、心の焦りやざわめきを抑える。骨蒸を除き喘鳴や痰咳をとめる。寝汗をとめ下痢を止め、気鬱を治し、腹痛を止める。胸膈を利して、煩渇を解き、寒熱を取る。身体の痛みをとる。
 以上である。病機と症状と治方が混在して記されている。気持ちが伝わってくる。経方医学で整理して病機を照らしていく。

経方医学で察する

病機と症状が混在して記されている印象。
 経方医学で察すると気陰両虚してかつ化熱し全身症状に及ぶ。
胃気は陰虚で痰飲がある。倦怠感が強く痩身である。月経が整わない(経方医学5 p79江部洋一郎著)。守胃出来ず暴発して頭顔部に上逆する。但しその量は弱い。肺気も少ない。よって呼吸器症状が起こる。その先の心心包への気も量が少なくて整形外科的な疼痛が起こる。また、陰虚加熱して身体が熱いし口渇もする。守胃機能は落ちているので夜間は盗汗する(経方医学1p64 江部洋一郎著)。気が鬱して膈不利も出現している。寒熱往来が出現している。ちなみに骨蒸とは骨髓から蒸し出てくるような身熱感(漢方診療のための中医臨床講義p141篠原明徳著)のことである。陰虚内熱の典型である。また胃気虚から第一あるいは第二分別が不利して下痢や腹痛が起こる(経方医学1p33 江部洋一郎著)。
 それにしてもあれもこれもに効かそうとするんだな。それでは図譜する。
 病機と治方は以下の通り。

私の感想

 なるほど。エキス剤の中で少数派の滋陰方の一つと捉えるなら優秀。生薬による配薬が可能で長く診れるならば、乾地黄を少しずつ加えて飲を補うことをするだろう。桂皮も熱に配慮しながら少量加える。ある程度胃気が整ったら石膏も加えたくなるだろうな。

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