先日の経方医学研究会の懇親会でのことである。アトピー性皮膚炎の慢性期、特に苔癬化した状態には漢方が使えない(あるいは効きにくい)ようだ、という話題になった。私も確かに、容易に効くものではないなと思っていた。
そして酔いが覚めた翌日、そのことが少し気になり出し、過去の文献を漁ってみた。『中医臨床』2023年12月号である。そこには様々なことが書かれていたが、ふと朱仁康(中国中医科学院広安門医院の皮膚科創設者)の名を目にし、彼の著作を思い出した。同誌での彼の記述は蕁麻疹に関するものであったが、私は別の記述を思い出したのである。
帰宅後に読み直してみると、やはりその記述があった。朱仁康の「利湿清熱方」に木通や沢潟、車前子が入っているのは、血分の熱を乾地黄や黄芩で冷ますと同時に、行き場を失った湿熱に「小便という出口」を作るためである。つまり「治湿不利小便非其治也(湿を治すに小便を利せざるは、その治にあらず)」という鉄則を処方に導入する余地がまだあったのだ。
私はこれまで苔癬化したものに対しては対症療法として、薏苡仁、芍薬、枳実、杏仁などを用いていた。つまり、清熱や、場合によっては化痰、化瘀などを行うことはあっても、生じた病理産物を排出させる方向性については、ほとんど考えていなかったのに気付かされた。
これまで師匠に教わった処方内容とその加減を踏襲してきたが、これからはさらにその内容を深く理解し、発展させる余地があるのだと自覚するに至った。まだまだ改善の余地というよりは、加減の余地があると感じた。未来の経方医学のためにも、慢性期のアトピー性皮膚炎の処方を創生したいと思うようになった。


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