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AIとの対話で見えた、鑑別の新たな地平

漢方医学

医師が治療の速度と精度を上げる要は、鑑別診断の幅広さにある。これは東洋医学でも全く同じであり、患者の訴えから傷寒金匱のどの条文に該当するか、あるいは近しい方剤は何かを導き出す。経方・後世方を問わず、より多くの引き出しを持つことの重要性は言うまでもない。

しかし、日常臨床において、私自身の処方を客観的に評価し、ディスカッションできる相手を見つけるのは容易ではない。今の私ははっきり言って孤独である。漢方でのSNSでの関わりを辞めてからなおさらだ。だから常に危惧している。「自分の処方パターンは偏っていないか」「見落としている病機はないか」「より効果的な方意が存在するのではないか」。これらは恐らく、臨床家が多かれ少なかれ抱いている課題意識であろう。

この課題を解決する糸口を、私はGoogleのAIに見出した。先日「Gemini Advanced」に登録し、早速「Deep Research」機能で、夏の頻用処方について検索をかけた。

【検索クエリ】

「日本で夏バテで処方される漢方方剤はなんでしょうか。」

検索実行後、アプリを閉じて他の作業をしていても、リサーチはバックグラウンドで進行する。しばらくして、Apple Watchに完了通知が届いた。

その結果は、私の期待を遥かに超えるものであった。結局日本国内の処方傾向に留まらず、中医学の学術論文レベルまで参照し、病機から方剤までを体系的に整理して提示させることができた。ざっくりとまとめると以下の通りであった。

  • 病機分析: 暑邪や湿邪による気虚、陰虚、水毒
  • 方剤リスト: 補中益気湯、清暑益気湯、五苓散、白虎加人参湯、生脈散、藿香正気散

リストアップされた方剤は、全て私自身が鑑別候補としていたものであった。自身の臨床判断が、AIによる網羅的なリサーチ結果と一致したことへの安堵と、AIの分析能力に対する純粋な驚き。それは、優秀な同胞を得たような感覚であった。

これからの時代、AIは我々臨床家の思考をサポートし、診断の精度を高める強力なパートナーとなり得る。私はもう一人で悩むことなく、この新たな仲間と共に、より質の高い漢方医療を追求していけると確信している。

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