Evernoteとは、素晴らしいメモ、ファイリングアプリケーションだ。Mac、Windows、スマートフォンでシンクロする。私がEvernoteとの出会いは2009年であった。すぐに有料会員となり、現在では約16,000ファイルを所有している。だから、決してライトユーザーではない。このアプリを最初に入れたデバイスはSONYのVAIO Tであった。
私の漢方の師匠は、自分が経験した症例（1000症例以上）を年次ごとにまとめ、過去の分とその年の分を漢方学習者に配ってくれた。もちろんコピーであるので、紙ベースである。手書きである。というか筆書き（！）である。とても貴重ではあるが見るからに膨大だ。読むだけでも一苦労だ。しかし、それを記憶するのはもっと努力が必要だ。
当時切羽詰まっていた。早く漢方を身につけたくて必死だった。そこで症例一つずつを切り離してノートコピー（紙ベース）を性、年齢、症状、主な処方の特徴、症例のコメントをファイルとしてこのアプリに取り込んだ。キーワード決定の発想として「全て忘れ去った後日。この臨床例に行き着くとしたら、このキーワードで検索するだろう」とした。
何かしらキーワードを入れたら師匠の当該のノートがヒットするようにしたのだった。これが本当に役立ち、私の経方医学修得に大変役だった。さらにその後外来でもすばやく検索できるように、デバイスを小型化するためにiPhoneを購入し、そこにEvernoteアプリをインストールした。
その後何年も満足して活用していた。その間Evernoteは多機能化していった。周囲のアプリもEvernoteと連携する機能を必須のように付けていった。
ところで私はローカルディスクに師匠のノートや他重要なファイルを入れてあった。そうすることでネットにアクセスしなくても素早くファイルにアクセスできるようにしていたのだ。しかしその大切ナローカルファイルと別れる日が来た。
運命の日。3年前の秋の大改悪だ。その直後iPhoneのEvernoteが立ち上がらなくなった。当然サポセンに連絡。全てのファイルを一回消去しろといわれた。ローカルのファイル含めいったん泣く泣く消した。しかしアプリの不安定さは変わらない。その後言われるがまま3回それを繰り返した。色々と不具合は出現するが、なかでも一貫しているのはローカルに再度ファイルをダウンロードしようとすると100％強制終了する。勿論そのことをサポセンに繰り返し伝えた。するとその現象は既知のもので次のアップデートまでお待ちくださいと、やはり繰り返しテンプレのように返信がくるようになった。もう、時間と気力の無駄と考えサポセンには連絡することを辞めた。私のiPhoneでEvernoteは1分以上立ち上がった状態を保てない。だからローカルにはファイルを貯められない。いやそれどころかどこが不具合かも確認しようがない状態が続いた。
勿論Evernoteをやめたいと思った。でも当時他のアプリに移行するにしてもファイルが多すぎてかうまくいかない。というのもエクスポート可能なファイル数の上限が決められていたのだった。つまり一括でファイルをエクスポートできない。当時Evernoteのファイルは約15000に達していた。それはまるで膨大なファイルを人質にされている気分だった。OneNoteへの移行も失敗した。そのうちMac版が安定してきたのでそちらをメインで使用することにした。iPhoneはというとEvernoteは起動せず、情報のファイリングにはFastever、検索にはEverPostを使うこととした。
私のファイルを解放してくれたらな。Evernoteだって他のサービスに移るのはいやだろうなと叶わぬ願いと納得しつつ放置していた。
最近BearからEvernoteへバックアップしようとしたとき、その逆の記事にであった。つまりEvernoteからBearへの移行についてである。そこで心底驚いた。ファイル数の上限が撤廃されていたのだ。いつの間にか！この日を待っていた。私は色めきだった。Evernoteはやはり心が広い。早速他のサービスに移行することを検討した。Evernoteの移行先候補として一般的に挙げられているアプリを一通りチェックした。先ほどのBear、Notion、UpNote、OneNote。ああ、UpNoteはダウンロードせず内容を見ただけであった。
結論から言うと、現時点で移行中止。確かにこれらのアプリはそれぞれ目的に応じた特徴的な性能を持っていた。それぞれ完成度が高い。今後も使い勝手が向上してくだろう。しかし当たり前と言えば当たり前だが、Evernoteと同じではないのだ。ひどいことにiPhoneでオフライン用にダウンロードすると途中で落ちてしまうことは現時点（2023/07/29）でも再現性がある。サポセンに問いあわせしても「既知の不具合だからアップデートを待って」と言われるだろう。しかし、それ以外に関してはデスクトップもiPhoneもいつのまにかすごく安定し、動作も一定の軽快さが戻って来ていた。Evernote側としてはもはや、他のサービスにユーザーが移る心配が減るほど、アプリの質を高めた自信があるから、ファイルの解放にいたったのではないかと愚考した。
そうなると話は早い。新しい使い方を含めてEvernoteを整理した方が良さそうだ。Evernoteとの関わりはまた、続きそうだ。
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