小青竜湯で頭痛が治せるのは心下の有水気が関連があるのではないかと考え、心下の病機を見直すこととした。勝手な言い草である。今回は心下痞である。
心下痞は他覚的には按じて柔らかく、抵抗はない。ただ、痞ということからつかえ感は自覚症状としてある。
病機解説は経方医学が良い。
心下痞を見てまず2種類に分類する。
1)発汗誤下の気痞、2)心下、胃に痰飲(湿)の2つである。
また1)の気痞は二種類ある。1つは麻沸湯で対応可能な気痞、もうひとつは瀉心湯で対応すべき気痞(経方医学4p206)。この1の鑑別は脈証で行う。即ち病邪の位置が内にある場合、関脈が浮いているのを確認して大黄黄連瀉心湯を投与する。寸脈が浮いている場合、まず外を治してから、瀉心湯を投与する。いずれ誤発汗誤下はやっかいだ。但し現代医学では誤発汗誤下はまずありえない。心下痞がある場合は2)に限ると考えて差し支えない。
心下痞の記述がある条文は以下がある。
傷寒論153条、154条、155条、156条、164条、171条244条。
金匱要略では痰飲咳嗽病30条、嘔吐噦下痢病10条である。
153条では誤治で発汗と瀉下させ、表裏陰陽ともに虚となっている。邪の位置は裏に移っている(それなのにさらに発汗させて破綻していく)。
154条は関脈上が浮脈。大黄黄連瀉心湯(経方医学4p 207)。
155条は悪寒。裏に陽虚。附子瀉心湯(経方医学4p 209)。
156条は瀉心湯と五苓散の鑑別 瀉心湯を入れて治らないのは気痞ではないからである(経方医学3p188)。
164条は傷寒発汗瀉下。表未解。そこでまずは表を治す(桂枝湯)。その後大黄黄蓮瀉心湯(経方医学4p 208)注意書きとしてなぜ麻沸湯で治せないか。強く誤下し、胃気が虚して、麻黄湯類を投与(桂枝湯ならば条文通り治癒する)。すると、麻黄桂枝などの温性の生薬で胃気を肺に引き上げると熱を帯びる。これで無形の気熱である心下痞が作られる(経方医学4p208)。
244条 太陽病で誤下した。五苓散(条文のまま)。
金匱要略の痰飲咳嗽病30条 膈間有水。心下、胃に飲が存在する。小半夏加茯苓湯(経方医学6 p93)
嘔吐噦下痢病10条 内部的な陰陽失調により胃中の寒飲が存在。半夏瀉心湯(経方医学4p215)。
日常診療で解熱のため誤下はない。まれに発汗はあるかも知れない。ただそれも最近では太陽病で生薬治療することはない。だから今日の日常診療に関連しているのは、金匱要略の2条文であろう。
ただここに、小青竜湯で頭痛治療の謎は解けなかった。
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