年末年始という「ハレ」の日々を過ごし、ふと鏡に映る我が身を見れば、明らかに質量が増加している。
これは毎年のことだ。

「これはいけない、何とかせねば」と焦燥に駆られ、今年こそはと様々な減量メソッドを比較検討し始める。
これもまた、毎年のことだ。
そんなお決まりの思考回路と反省の中で、今回私が辿り着いた結論。それは、単なるカロリー計算ではなく、現代医学における重要な分子メカニズム、mTOR(エムトア)の制御理論に基づいたアプローチであった。
細胞の司令塔「mTOR」の二面性
mTORとは、細胞内における「成長と代謝の司令塔」である。この分子が興味深いのは、その活性状態によって細胞の運命を全く異なる二つのモードへと切り替える点にある。
- 成長モード(mTOR活性化):
栄養が十分にあり、インスリンなどの成長因子が作用するとスイッチが入る。細胞は合成を促し、筋肉を作り、身体を大きくする。
- 修復モード(mTOR抑制):
空腹やストレスによりmTORが抑制されると、細胞は「成長」を止め、内部を浄化する「オートファジー(自食作用)」へと移行する。古くなったタンパク質を分解・リサイクルし、細胞レベルでの若返りを図るシステムだ。
現代病の本質と「抑制」の意義
現代の飽食環境下では、絶え間ない栄養供給によりmTORが過剰に活性化し続けている。これは一見、豊かさの象徴に見えるが、生物学的には細胞のゴミ掃除が行われないことを意味し、これが老化の一因とされている。
ゆえに、昨今のアンチエイジング医学において「mTORの抑制」が健康寿命延伸の鍵とされるのは理にかなった帰結である。
ダイエットの真髄は「動的なサイクル」にあり
しかし、「寿命延長=mTOR抑制」という単純な方程式を盲信してはならない。
常に抑制状態にあれば、確かに老化因子は減るかもしれないが、同時に筋肉は衰え、気力は萎え、いわゆる「フレイル(虚弱)」の状態に陥る。
私が今回の計画で意図しているのは、この二元論の統合である。
すなわち、断続的な断食によって意識的に飢餓状態を作り出し、オートファジーを強制起動させる時間(OFF)。そして、適切なタイミングで栄養を投下し、運動負荷によってmTORを鋭く立ち上げ、筋肉を合成させる時間(ON)。
重要なのは、抑制か活性化かのどちらか一方ではなく、その時々に応じた適切な調節、すなわち「バランス」である。
このメリハリのあるサイクルこそが、細胞の新陳代謝を活性化させ、理想的な肉体へと再構築するための唯一の解であると考察する。
結語
理論は完璧だ。
mTORの分子メカニズムに基づき、細胞レベルで代謝をハックするこの計画に、死角は見当たらない。
ただ一つ懸念があるとすれば、この完璧な計画を実行する私の意志の強さである。
こたつに入り、目の前にある正月料理の誘惑と戦いながらこの原稿を書いている今、高尚なmTOR理論も、所詮は「絵に描いた餅」になりそうである。
お正月だけに。




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