「あれ? 喉、乾いてますね?」 「はい。乾いてます。先生は何でもお見通しなんですね」 診察中、以前の脈と変化があったため尋ねたところ、そんな返事が返ってきた。
以前の私は、脈診だけで次々と症状を言い当てる先生を見て「すごいな」と思っていた。 別にそれを目指していたわけではないのだが、最近は私も少しは当たることもある。 とはいえ、当てようとして言っているわけではなく、あくまで「問診」なのだ。
「乾いてますね?」と聞いて、「乾いてます」なら、このような病機に変化したと判断する。「乾いてません」ならばこちら、というふうに、病態を判断するための単なる材料に過ぎない。
たまに、全部「いいえ」と答えられて、「全然当たりませんねー」と患者さんと二人で笑い合うこともある。 これらは全て、脈診という技術が標準化されているからこそできることだ。師匠への感謝しかない。


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