去年の塩釜での講習会と昇段審査を境に、私の杖道ライフは激変した。 単に真剣という領域を通り越し、稽古の細部に至るまで凄まじい「こだわり」を持つようになったのだ。その最たるものが、技を繰り出す際の「掛け声(気合)」である。
杖道の掛け声は基本的にシンプルだ。打ち込むときは「エイ!」、突くときは「ホ!」の二択。 これまで経験してきた武術や空手でも声は出してきたが、今の私は一味違う。「声を武器にする」「声波で相手を物理的に吹き飛ばす」くらいの気迫を込め、さらには日々のストレスやモヤモヤまで全部乗せして発射するようになった。稽古が終わる頃には喉がガラガラになるほどの完全燃焼である。
周囲からも「いやあ、気迫が凄いですね!」あるいは「声だけ師匠だ」とその熱量は褒められこそすれ、止められることなど一度もなかった。完全に自分のスタイルとして定着したと悦に入っていた、つい先日のことだ。
入門当初から温かく見守ってくださっている大ベテランの先生が、おもむろに近づいてきて、神妙な面持ちでこう切り出した。
「Dr.おぐりん家さん……あのね、掛け声が長すぎる」
えっ、長さですか?
「そう、長いの。『エイッ!』じゃなくて『えぃぃぃーーーー!』。『ホッ!』じゃなくて『ほぉーーーーー!』になってる」
まさかのロングトーン指摘。 相手を圧倒する気合の砲撃だと思っていた私の声は、客観的に見るとただの息の長い熱唱だったらしい。
先生いわく、「掛け声を鋭く短く切ることで、技のキレとスピードが段違いに上がる」とのこと。言われてみれば、声を伸ばしている間、自分の動きまで一緒に間延びしていた気がしてくる。力も余分に入っていたかも。ぐうの音も出ない。
それ以来この一週間、脳内で「伸ばすな、切れ!」と念じながら、キレ味重視のショートブレス稽古に励んできた。 次の稽古では、鋭く短くなった私の「エッ!」「ホッ!」を先生に披露するつもりだ。


コメント