蕁麻疹は漢方医学の理解度を測るのにとても有効な疾患である。何故なら症状の有無に曖昧さがないからだ。治せたかどうかがハッキリ分かるので治療効果が明瞭だ。
などと調子こいて、これまであらゆる病機の蕁麻疹を治療してきた。しかしふと振り返ると蕁麻疹の治療方剤についてかつて検索したことがないのに気づいた。
そこで最近のお気に入りのNotebookLMに聞いてみることにした。すると以下の方剤を46冊の漢方関連資料から引っ張ってきた。
すると以下のような結果を返してきた。
1.四逆散(しぎゃくさん)
適応病態: 柴胡、枳実、芍薬、甘草の4つの生薬で構成され、主に情志の損傷(精神的ストレス)により生じる肝気鬱結を治療します。イライラ、緊張、不安、憂鬱などの精神症状や、これらのストレスによる機能異常(自律神経支配領域の運動機能異常)、胸脇部・背部の筋肉緊張、膨満感、違和感などにも有効です。
蕁麻疹への関連: 蕁麻疹は精神的ストレスによって誘発されることが多いため、精神的な要因が関与する蕁麻疹に有効と考えられます。
2.小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
適応病態: 冷えや水(湿痰)の停滞による鼻アレルギー(アレルギー性鼻炎)の寒証(くしゃみ、水鼻型)に効果を上げた例が示されています。また、「寒飲伏肺証」(寒痰が肺に停滞する病態)による咳、喘鳴、胸痛などにも用いられます。
蕁麻疹への関連: 蕁麻疹が寒さによって悪化したり、水様の浮腫を伴ったりする**「寒証」や「水湿停滞」の病態**に有効である可能性があります。
3.真武湯(しんぶとう)
適応病態: 茯苓、白朮、附子、生姜、芍薬で構成され、体内の水液貯留(湿邪)による浮腫、重だるい痛み、下痢などを治療します。体を温めて利水を図る「温陽利水」が基本作用です。
蕁麻疹への関連: 蕁麻疹が浮腫(むくみ)を伴う場合や、体が重だるいなどの湿邪の症状が見られる場合に有効と考えられます。
4.越婢加朮湯(えつぴかじゅつとう)
適応病態: 強い炎症と水の停滞がある場合に「清熱利水」の目的で用いられることがあります。特に、強い炎症を伴う眼科疾患への適用が示されています。
蕁麻疹への関連: 蕁麻疹が赤みや熱感を伴い、腫れが強いなどの炎症性の症状が顕著で、かつ水分停滞を伴う場合に、その清熱利水作用が有効と考えられます。
5.桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
適応病態: 駆瘀血剤に分類され、難治性の病や慢性疾患に広く用いられます。産後の足が立てない患者に効果があった例が示されており、山本巌先生は「治らない病は癖血を考えよ」と述べられています。
蕁麻疹への関連: 慢性的な蕁麻疹は難治性であることが多いため、その背景に**瘀血(血の滞り)**がある場合に、根本的な治療として選択肢となり得ます。
6.小柴胡湯(しょうさいことう)
適応病態: 化膿性炎症、悪寒・発熱・頭痛などの表証、大便秘結など、さまざまな症状に対する合方の基剤として用いられることが示されています。
蕁麻疹への関連: 蕁麻疹に化膿性炎症を伴う場合、感冒のような表証を伴う場合、あるいは便秘を伴う場合など、患者の具体的な症状に応じて他の生薬や方剤と組み合わせて使用される可能性があります。
7.柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
適応病態: 小柴胡湯に桂枝を加えて発汗させるもので、悪寒、発熱、頭痛などの表証を兼ねる場合に用いられます。
蕁麻疹への関連: 蕁麻疹が感冒のような表証を伴う場合に考慮される可能性があります。
8.葛根湯(かっこんとう)
適応病態: 無汗で肩こりがある場合の小柴胡湯との合方が示されています。本来は首から肩にかけてのこわばりを伴う感冒などの表証に用いられます。
蕁麻疹への関連: 蕁麻疹が悪寒や肩こり、無汗などの表証を伴う場合に有効と考えられます。
9.白虎湯(びゃっことう)
適応病態: 高熱で口渇が甚だしい場合(小柴胡湯との合方も含む)に用いられます。これは「陽明病」の典型的な熱証に対応する方剤です。
蕁麻疹への関連: 蕁麻疹が非常に強い熱感、赤み、高熱、激しい口渇などの熱証が顕著な場合に、その清熱作用が有効と考えられます。
10.大柴胡湯(だいさいことう)
適応病態: 小柴胡湯から人参と甘草を除き、大黄と枳実を加えた方剤で、便秘、腹部の膨満感、吐き気、口が苦い、心下部の脹りや痛み、胸脇部の膨満感を伴う場合に用いられます。
蕁麻疹への関連: 蕁麻疹に便秘、腹部膨満感、消化器症状(吐き気、口苦)、胸脇苦満といった「柴胡証」と「大黄証」が合わさった病態を伴う場合に考慮されます。
なるほど。蕁麻疹の発想としては全てあり得る病機で目新しさはない。私自身結構発想としては網羅していたことに安堵した。但しこれらの方意を使うことはあったものの、それぞれの方剤単独で処方したことはない。
最も頻度が高い方意は疎胆の柴胡剤、そして白虎湯に配薬される胃熱を清熱する石膏であろう。最も頻度が低いのは、たまたまであろうが、上記で言うところの真武湯かな。寒い時に出現する蕁麻疹はあまりなかった。ただ、真武湯の解説では寒い時に出現するという但し書きがない。水滞に対して利水しようとして附子が悪さして蕁麻疹が悪化するかもしれないから注意が必要だ。
ただし、このようにせっかくリストされている方剤にケチをつけるのはナンセンスだ。それどころか私自身、他人に蕁麻疹治療を教えるとしたら、何にも整理できていないことに気づかされた。
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