弦脈は当たり前に現れるので厄介である。
例えば肝陰虚と腎陰虚。この二つの鑑別をどうすれば良いか。
特に、脈状における鑑別ポイントはあるのか。
教科書的な鑑別としては、本来「腎陰虚に弦脈(げんみゃく)はない」とされる。
しかし、実際は脈証だけで決めることはできず、結果として症状から鑑別するしかないことが多い。
師匠曰く、「現代人はストレスが多く、誰でも弦脈が出ることが多い」。
だから、弦脈があるかないかで病機を鑑別するのは、まず当てにならないのが現実だ。
そもそも弦脈とは、脈の方向に働く張力を指す。原因はストレスだけではない。痰飲(たんいん)などでも現れる。
そうは言っても、実際の脈診では、尺脈を除いてどこもかしこも弦だらけ、ということが珍しくない。
ならば、弦脈の「強弱」で鑑別してはどうか。
強い弦、弱い弦、中くらいの弦……といった具合に分類するのだ。
しかし、そこまで主観的な切診に、果たしてどれほどの意味があるだろうか。
仮にその分類を採用するとしても、結局は「病機を構築し、処方し、効果があれば正解、無ければ一旦引っ込める」というプロセスを繰り返し、地道に症例を重ねていくしかない。
あるいは、もう一つの手として「弦脈は見ない」と割り切るか。尺脈(腎の部位)においてのみ弦をとる、というスタイルはどうだろう。
いずれにせよ、脈診には未だに悩まされ続けている。
しかし忘れてはならないのは、「脈診のための脈診」になってはいけないということ。あくまで病機を見抜くための「一つのツール」である、という立ち位置を保ちたいものだ。



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