『輔行訣』には、これまで紹介したように少なくとも21ものバージョンが存在する。そして、そのすべてのバージョンの正確性や信頼性は等しいわけではない。したがって、これらを平等に扱うことはできない。単純な多数決で「正しい」内容を導き出すことが困難であるのは、この事実を無視できないからである。
そこで、現時点では『輔行訣』の『范志良抄本』を仮に最上位の信頼性を持つバージョンと位置づけ、その内容を深く読み解く作業を進める。
『范志良抄本』の読解と経方医学的考察
具体的な手順は以下の通りである。
- 徹底的な読解と問題点の抽出: 湯液経の条文は、陶弘景自身の解説とは切り離して読解する。陶弘景の解説は、本質的にはほとんど用をなさないものとし、湯液経の条文そのものの正確性だけが担保されればよいという視点で分析を行う。各条文を丁寧に読み込み、処方、薬味、薬量、病態、治療原則などを詳細に把握する。六病位や方証相対といった経方医学の理論体系に基づき、その意図するところを解釈する。その過程で、記述に矛盾がある、理解が困難であるなど、疑問点や問題点を具体的に記録する。
- 今後の検討への示唆と実証的な検証: この作業を通じて得られた問題点は、今後の他のバージョンを検討する際の重要な目標となる。他のバージョンでは、これらの問題点に対してどのような記述がなされているか、あるいは新たな解釈のヒントが得られるかという観点から分析を進める。また、記載されている処方や治療法について、現代の臨床経験と照らし合わせ、その有効性や安全性について考察することも、『輔行訣』の価値を再評価する上で有益である。
- 最終的な内容のまとめ: 21つ全ての『輔行訣』を読み終えた後、最終的な条文の内容、そして経方医学に基づく解釈を総合的にまとめる。この作業により、『輔行訣』全体の医学的意義や思想が明らかになるはずである。
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