ここからは、救諸労損五首となる。本方はその1つ目。
まずは条文を挙げる。
养生补肝汤
治肝虚,筋极,腹中坚澼,大便閟塞方:
蜀椒汗一升、桂心三两韭叶切一把、芍药三两、芒硝半斤、胡麻油一升
右六味,以水五升,先煮椒、椒、韭叶、芍薬,取得三升,去滓。内芒硝于内,待消已,即停火,将麻油倾入,乘热,急以桑枝三枚,各长尺许,不住手搅,令与芍药和合为度,共得三升,温分三他,一日尽之。
意訳すると以下とする。
肝虚
肝気虚で
筋极
筋は固くて
腹中坚澼
腹中もコクコチ固い
大便閟塞
便秘が頑固な人
配薬は以下の通りである。
蜀椒、桂皮、韭叶、芍薬、芒硝、胡麻の六味である。
韭叶(きゅうよう)はニラの葉で、本草を紐解くと症状に関連する機能としては安五臓、除胃中熱であろう。
胡麻はゴマで、新修本草で症状に関連する機能としては補五臓、利大腸である。現代の本草では補肝腎陰作用があるとされている(実践漢薬学 東洋学術出版 三浦於菟著p333)
胡麻、芒硝が標治。便秘への対症療法。ただ、桂皮、芍薬はどんな役割があるか。また、蜀椒の大腸散寒作用は何故必要なのか。
例えば、配薬と症状だけをだけ考えると、桂皮はよくわからないけど、陽明病で胃熱が高まり、便が秘結し、かつ、芍薬を使う程の腹直筋の攣急・・・。なんだ?普通ならば芒硝など承気湯類だけで良いだろう。百歩譲って大建中湯の証を思えば蜀椒も悪くない。ではなぜ、桂皮?芍薬?桂枝加芍薬湯なら1:2であるはずである。しかし等分になっている。だからこれも違う。
方剤名はあくまでも養生補肝湯。つまり肝虚、胆気虚がベースにある。つまり全身の収斂や疎泄や収蔵し難い。だから例えば承気湯類だけでどがーっとやると、肝気がぶっ飛んでしまう。となると肝虚、胆気虚対策が必要なのだ。
鼓舞されて熱を帯びた胃熱を石膏で清熱するとそれでなくても弱い肝気がぶっ飛んでしまう。だから韮葉でやんわりと熱を取り除く。せっかく鼓舞された胃気も肝気虚があるので、小大腸に及ばず、腹中に寒を生ずる。その為蜀椒を配する。桂皮でやんわりと肝気を通し芍薬で収斂するように配薬しているのだ
それにしても、どのように診察したら肝気虚を診断できるかまだ自信がない。
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