毎日午前7時にブログ更新

肺の通調水道作用について

雑記

肺の通調水道作用を初めて耳にしたのは近畿で師匠の元にいたときだった。年に一度の研究会の席。優秀な漢方医の症例発表での出会いであった。

その時のことはまだ覚えている。まるで瓶の栓を抜いて(確かしゅぽっと言ったと思う)、水が下に落ちるように通るのだ、と聞いた。

当時まだ、経方医学を学び始めたばかり。私にとって通調水道については理解を超える理論であった。それでも、肺が利水に関係するなんて!と消化不良気味であっても驚いた。

その後確かにそういう理論はある。しかし今目の前の患者がそうだあるいは違うということの判断には及ばなかった。だからその後しばらくその理論、と言うか「通調水道作用」という用語を実臨床の現場で想定していなかった。

しかし経方医学理論の中で結果的に取り入れていた。

と言うのも生薬を使用する場合、腹診をする。ここで明らかになる粛降障害(経方医学1 p82)があれば、それを取り去るような生薬あるいは方意を配置していたのだった。

その後しばらくしてからやはり両者は同じではないかと思い始めた。そうとは知らずに通調水道作用の概念を検討していたのだと気付いた。

そうなのだ。

経方医学における粛降作用、第1粛降が肺の通調水道作用に当たるのだ。いやもしかしたら第二粛降も概念的にも重なるのかも知れない。

第1粛降は吸気に合わせて血から津液を抜いて肺から心下まで降ろす。第二粛降は心下から大腸、膀胱までである(経方医学1 p31)。その途中で何らかの障害があれば津液の調節がままならなくなり、浮腫の発生要因となる。

先に紹介した竜胆瀉肝湯の方意も同様だ。肺というより胸、隔に乾血するほどの湿熱が存在していることが示唆される。下焦、というかターゲットが排尿症状なのにだ。但し竜胆瀉肝湯証では肺に湿熱があると解釈していない。なぜなら、もしそうならば呼吸器症状が出現するからだ。また心下に障害があるかと言えば、隔熱の伝導により熱を帯びて結果何らかの障害があるかもしれない。それは直接診察してみないと分からない。

そこで、肺、あるいは胸にも粛降障害あるいは通調水道に障害がある場合どのように鑑別すればいいかという疑問に戻る。初診時に脈診では判断は難しい。ここはやはり腹診であろう。

竜胆瀉肝湯処方時はエキス剤で病名漢方でも腹診くらいはしようっと。

コメント

タイトルとURLをコピーしました