「夏といえばサウナ!」…そう聞いて、意外に感じる者もいるかもしれない。じめじめとした暑さに、さらに熱いサウナなど!と思うかもしれないが、実は夏こそサウナがおすすめなのだ(こじつけすみません)。
夏は湿度が高く、体内に「湿邪」がこもりやすい季節である。これに厳しい暑さによる「熱邪」が加わると、漢方でいうところの**「湿熱(しつねつ)」**という状態になり、体が重だるい、食欲不振、下痢などの不調が現れることがある。
漢方で体のバランスを整えるのも良いが、(強引かも知れないけど)今回はサウナの気持ちの良い健康効果に注目したい。
科学が裏付けるサウナの健康効果
「サウナが体に良い」とはよく聞くが、具体的にどのような効果があるのだろうか?最近読んだサウナに関するレビュー論文「Laukkanen, J. A., Laukkanen, T., & Kunutsor, S. K. (2018). Cardiovascular and Other Health Benefits of Sauna Bathing: A Review of the Evidence. Mayo Clinic Proceedings, 93(8), 1111-1121」では、サウナの多様な健康効果が科学的にレビューされている。
この論文で示されている主な効果は以下の通りである。
- 心血管疾患リスクの低減: 週に4~7回サウナに入る者は、週1回の人に比べて脳卒中のリスクが約62%も減少するとのことである。心臓病や突然死のリスクも大幅に下がることが示されている。
- 高血圧の改善: 30分間のサウナ入浴で血圧が低下し、週に4~7回頻繁にサウナに入る男性は高血圧の発症リスクが約47%減少することが報告されている。
- 神経認知疾患のリスク低減: 認知症やアルツハイマー病のリスクも、頻繁なサウナ入浴によって65~66%減少する可能性が示唆されている。
- 肺機能の改善と呼吸器疾患のリスク低減: 喘息や慢性気管支炎の症状改善、肺炎のリスク減少も期待できる。
- 風邪の罹患率の低下: サウナ入浴によって、一般的な風邪をひく頻度が半減したという研究結果もある。
- 筋骨格系疾患の痛みの緩和: 変形性関節症や線維筋痛症などの痛みを和らげる効果も期待できる。
- 頭痛の改善: 慢性緊張型頭痛の改善にもつながることが示されている。
- 皮膚の健康促進: 特定の皮膚疾患の治療補助や、肌のバリア機能向上にも役立つ可能性がある。
- 精神的なリラクゼーションと幸福感の向上: 精神病のリスク低減にも繋がり、サウナが心身の健康に良い影響を与えることが示されている。
- QOL(生活の質)の向上: サウナ利用者は、身体機能や活力、全体的な健康において有意に優れていることが報告されている。
これだけ多くの健康効果があるとは、驚きである。夏の湿熱による不調だけでなく、日々の健康維持にもサウナは効果的なようだ。
論文から学ぶフィンランド式サウナの入り方
では、具体的にどのようにサウナに入れば良いのだろうか?この論文で言及されている伝統的なフィンランド式サウナの入り方を参考にしよう。
- 種類: 主に伝統的なフィンランド式サウナ(受動的な熱療法)である。
- 温度と湿度: 温度は80℃から100℃、湿度は**10%から20%**が一般的である。熱い石に水をかけることで一時的に湿度を上げることができる。
- 構造: 丸太や木材で作られたサウナ室に、床から高い位置にある木製ベンチがある。効率的な換気も重要である。
- セッションの構成: サウナ室での短い滞在と、水泳やシャワー、あるいは室温での休憩といった冷却期間を交互に繰り返す。
- 滞在時間: 個人の快適さに合わせて5分から20分程度が目安である。
- 頻度: フィンランドの人々は、少なくとも週に1回、平均で週に2~3回サウナに入浴する習慣があるそうだ。
この論文を読んでいて特に興味深かったのは、**「外気浴」**についての言及がない点である。日本ではサウナ後の外気浴が一般的だが、フィンランド式では冷却期間としてシャワーや水泳などが推奨されている。もしかしたら、外気浴は日本独自の文化なのかもしれない。
夏の湿熱による不調に悩まされている者は、ぜひサウナを試してみてはいかがだろうか?心身ともにリフレッシュして、この夏を健やかに乗り切ってほしい。
え?サウナで湿熱が治るかって?いやそれは分かりません。すみません。
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