医学哀中参西録とは近代の老中医張錫純の著作。
多くの古医書を読破し、臨床力はずば抜けている。また古代伝統医学に西洋医学を取り入れたことでも知られている。
師匠も良く引用した。
私も10年以上前通読した。
今はほとんど記憶の跡形もない。
当時は良い翻訳本もなく臨床力も漢文読解力も未熟だったため、ごく部分的にしか記憶に残らずじまいであった。
私は傷寒金匱を繰り返し読み、解釈してくことに熱中していた、ということにしておきたい。
だから医学哀中参西録については殆ど師匠の話、症例を受け売り的に配薬するに留まっていた。
非常にもったいないことをした。
今日、良い訳本が出版され始めている。
私の臨床力もやや向上している(漢文読解力も?)。
だから原本と比較しながらじっくり読み進められる。
早速、「中医臨床のための医学哀中参西録(神戸中医学研究会編訳 東洋医学出版社)」の第一巻「傷寒・温病編」から読んでいこう。
これは原本の医学哀中参西録は途中部分からだ。
しかし傷寒論から始まるとは、私にとって再入門するにはとても馴染みやすくありがたい順番だ。
麻黄加知母湯
治傷寒無汗
麻黄四銭桂枝尖二銭甘草一銭杏仁去皮炒二銭知母三銭
先煮麻黄五六沸、去上沫、納諸薬、煮取1茶盅、湯服、䨱被取微以汗 、不須啜粥、余如桂枝法将息。
麻黄湯に知母を加えたものだ。
知母は清熱と同時に滋陰作用がある(漢方薬論p79)。
張錫純先生の解説を意訳すると発汗しても解熱しない者がいるので知母を加えるという。
それは発汗後もなお清しきれていない熱(余熱未清)に原因があるという。
ならば仮に処方に誤りないと仮定した場合、麻黄湯で解熱する者と、しない者との間にどのような差があるのだろうか。
それは素体に陰虚があるかどうかである。
では素体に陰虚があると何が想定されるか。
余熱未清については経方医学6から引用したい。
誤治(汗、吐、下)あるいは「傷寒治癒後、余熱未清」のために胸中大気(宗気)が損傷する。胸中大気は熱のため津液偏熱(燥熱)の状態となる(経方医学6p73)
ここで経方医学で解釈する。
素体が陰虚であるところに傷寒の邪が入り、胃気が鼓舞される。
すると、陰虚が増悪して化熱する。
そこに麻黄湯で解肌しても陰虚内熱が原因の発熱が制しきれない。
だから、知母を加えて滋陰して清熱することで解熱するのだと解釈した。
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