「漢方を勉強しよう!」と意気込んだものの、忙しさやモチベーションの低下で挫折してしまった…そんな経験を持つ医師は結構多いのではないでしょうか。ですが、過去の失敗が未来の成功を阻むわけではありません。
再スタートを切るために必要な心構えや第一歩を、幾度も漢方の勉強に挫折した末、生薬を使いこなすようになった不肖Dr.おぐりん家がお伝えします。
挫折は学びの経験になる
過去の挫折は、これからより効率的に学べるようになる貴重な資産です。
漢方の学習を一度経験していることで、自分のつまずきやすいポイントが分かっています。それを踏まえれば、習得スピードはそれまでより上がります。
私自身最初、総論的に漢方理論全体を網羅しようとして挫折しました。失敗を活かして、後述しますが一つのことから始めることにしたことで功を奏しました。これはあくまで私の例ですが、今こそご自分に合った学習スタイルを見つけるチャンスであることに変わりありません。
挫折の原因を振り返ることが鍵
過去の失敗を振り返り、何が原因だったのかを明確にすることが重要です。
忙しさを理由にされるのはともかく、教材選びのミス、そもそも目的意識の欠如など、原因を知れば対策が立てやすくなります。特に教材については、ひどい書籍になるとページ間で理論的矛盾を孕んでいても平気で出版されている厚い本もあったりしました。どなたでもそうでしょうが、理論矛盾は記憶するのに大きな障害になるものです。
例えば私のように「全てを完璧に理解しようとして時間が足りなかった、挫折した」というケースであれば、次回は、「目の前の患者さんを治すことに集中する」あるいは「頻出の漢方薬から学ぶ」など、現実的なゴールを設定できます。このように過去を冷静に見つめることが次の成功の基盤となります。
今の患者さんを治すことに集中しよう
実は目の前の患者さんを治すことに集中することが、漢方学習のモチベーションを高める一番の方法です。
医師であるあなたにとって、「患者さんを治したい」という気持ちは原動力です。その思いを起点にすると、自然に漢方の知識を使いたくなり、学びが深まります。いつか使うために漢方を勉強するという発想から離れましょう。今から漢方を使って今から患者さんを治療するのです。
例えば、患者さんの症状に合う漢方を探すために文献や資料を調べるようになると、結果的に使える漢方薬の種類が増えていきます。この「学びながら治療する」サイクルが回り始めると、やりがいを感じられ、学習が継続しやすくなるでしょう。調べるうちに知識も増え、漢方の効き具合を実感できます。
FAQ
1. 忙しくて時間が取れない中でどう勉強すればよいですか?
忙しい日々の中でも、日常診療で遭遇する症例をきっかけに学ぶのがおすすめです。患者さんの症状に合わせて漢方を調べると、即座に実践的な知識が身につきます。机に向かう時間を確保するよりも、臨床の場での学びが有効です。
2. 漢方薬の名前が多くて覚えられません。どうすればいいですか?
カンニングしてください。患者さんを何か理由をつけて診察を終えたあと(診察室から追い出した後?)、横に隠しているノートや本を参照してください。私の場合、師匠の症例をインデックス化、すなわち症状から方剤がヒットするようにEvernoteにまとめ、それをノートパソコンで調べていました。今ならスマホでしょうか。患者さんをいっぱい見ているうちに嫌でも漢方の名前は覚えます。
3. 漢方の勉強に役立つ教材や参考書は何ですか?
漢方初学者は、病名、あるいは症状だけで漢方を決める本は必携です。何故なら先の2と関連しますが、カンニングも駆使してこれでとりあえず処方可能になるからです。そしてそれは、処方後見直す時に何故その症状に有効なのかを解説する本がもう一冊必要です。これは基本的な理論や使用例が簡潔にまとめられている入門書がおすすめと言えます。
4. 症例を見てもどの漢方薬を選べばいいか分かりません。どうすれば?
漢方初学者にとって大きな障壁は偉い先生たちが「症状の背後にある「証」を考えること」などとさももっともらしいことをいう輩が多いことです。体質や腹診、脈診がどうとか、はっきり言って、そういうことを言っている方達のほとんどはちゃんと弁証論治(東洋医学的に診察して病態を明らかにして、それに基づいて漢方方剤を決定する)なんかしてません。だから最初は病名や、症状で漢方セレクションして問題ないです。その上で選んだ漢方は効いたのか、効かなかったのかを冷静に受け止める。その理由を調べることで結果的に学びになり、次第に自信を持って選択できるようになります。成功体験も失敗体験も患者さんに教わってすべてが糧になります。
【記事のまとめ】
- 漢方の勉強を再スタートするためには、過去の挫折を学びの糧として活かし、自分に合った方法で進めることが大切です。
- 目の前の患者さんを治すことに集中し、実践的な学びを積み重ねることで、自然に漢方知識を深められます。
- 漢方薬の名前や使用方法を覚えるには、診察の現場ではカンニングて乗り切り、後で理論の勉強をする。
- 漢方学習は小さな成功体験を積み重ねることでモチベーションを保ちながら続けやすくなります。
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