大玄武湯について条文を挙げる。
大玄武湯
治腎氣虛疲,少腹中冷、腰背沉重,四肢冷,小便不利,大便鴨溏,日十余行,氣惙力弱者方:
茯苓三兩白朮二兩附子一枚,炮、芍藥二兩乾姜二兩人參二兩甘草二兩,炙
右七味,以水一斗,煮取四升,溫服一升,日三夜一腹。
意訳すると、以下のような人を治す。
腎氣虛疲
腎気がとても虚している。
少腹中冷
少腹は心下から臍までが冷えている(↓※参照)
腰背沉重
腰背部はずんと重い。
四肢冷
四肢が冷えている。
小便不利
尿がちゃんと出辛い。
大便鴨溏日十余行
便が水様便が10日も続く。
氣惙力弱
気が萎えて力が弱まっている。
※少腹の部位は現時点では婦人妊娠病脈証并治第二十3条から「少腹如扇」の解釈より、心下から臍部の間と判断している(経方医学3p151)
附子湯加甘草である。
附子湯でみると、傷寒論少陰病婦人妊娠病脈証并治第二十で以下の通り。
(304) 少陰病,得之一二日,口中和,其背悪寒者,当灸之,附子湯主之。
(305) 少陰病,身体痛,手足寒,骨節痛,脈沈者,附子湯主之。
婦人妊娠病脈証并治第二十
(3)婦人懐娠六七月,脈弦発熱,其胎愈脹,腹痛悪寒者,少腹如扇,所以然者,子蔵開故也,当以附子湯温其蔵。
いずれの経方関連条文も、そのまま本方に当てはまることはない。よって、附子湯の方意を元に本方条文症状から病機治方を解釈していく。
病機としては胃気腎気ともに低下。腰背部の陽気も含め腎気陰両虚していることが分かる。
また胃気の著しい低下より小腸気も低下して第二分別失調して水様便が出現している。腎気不足で膀胱の開闔失調で尿不利。前後通、脈外の衛気が四肢に及ばず四肢は冷えている。
治方は、人参、甘草で守胃しつつ、胃気を人参、甘草、生姜で鼓舞する。芍薬で腎気へ胃気を送る。炮附子で腎気を高める。高まった腎気により開闔失調が改善し尿不利が改善。胃気は小腸気に衛気を伝達し第二分別失調は改善し水様便は消失。また前後通、脈外へ衛気が供給され四肢の冷えも消失に至る。
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