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大気下陥における数脈の機序―肺の虚と胃気の鼓舞

漢方医学

 今回の経方医学研究会での発表において、肝になる部分はここだろう。 小児の倦怠感の症例。数脈(さくみゃく)下において脈状が定まらない状態を「参伍不調(さんごふちょう)」と捉えた。症状とこの参伍不調から「大気下陥(たいきかかん)」の適応と判断し、昇陥湯(しょうかんとう)を処方して奏功した症例だ。

 そもそも、教科書的に言えば数脈は昇陥湯の処方適応ではない。だからこそ、私は当初、別の処方を選択した。しかし、症状の改善は見られなかった。その後、昇陥湯に転方して初めて奏効したのだ。 結果から逆説的に考えれば、この症例における昇陥湯の適応は誤りではない。脈状は典型的なものではなかったが、判断からは除外すべき要素だったとも言える。しかし、それでは発表にならない。どうしてもこの「数脈下での参伍不調」という現象を、経方医学の論理で表現し、説明し切りたいのだ。

 頭の中でイメージはできている。しかし、それを言葉にするのが難しい。図解や動画であれば近い表現ができるかもしれないが、抄録はあくまで文字だけで伝えなくてはならない。

現時点での言葉での説明はこれだ。 何らかの原因で、肺は胸腔内で下陥し、ぺたっと底にへばりついている。 一方で、胃気(いき)は胸に向かっている。倦怠感を治そうとする生体の反応として、少し鼓舞されている状態だ。但し、発熱はしていない。 大気下陥であるため、肺方向への宣散(せんさん)機能は落ちている。行き場を失った気はどこへ向かうか。心、あるいは心包方向への宣散して、心包のキャパシティがある分だけ、より多く流れ込んでいるの。 その結果として、脈は「数」を呈する。

ああ、こういう表現で伝わるだろうか。 抄録の提出期限まで、もう少しだけ間がある。ギリギリまで言葉を練り上げようと思う。

 

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