私が入門した頃、正式な稽古である日曜日は参加せず、火曜日の夜(火曜日稽古会)にのみ出席していた。
日曜日は午前中出勤で午後からだと、必ず遅刻してしまうからだ。
火曜日稽古会ではI夫妻(ともに六段)ともう一人Bさん(入門当時二段 ベテラン看護師)がいらした。この4人での稽古を繰り返した。
火曜日稽古会は冬期は雪深くなる。ご高齢のI夫妻(ともに六段)は休みとなる。日曜日の稽古は続くも、私は結果的に冬期は休みということになった。春になっても、そもそもさぼり癖の私はなかなか復帰できず、復帰した頃には型をほとんど全部忘れていた。そんな中でI夫妻とBさんは優しく迎え入れてくれた。
何度もサボり、火曜日稽古会もいつのまにか休会となり、今では私の自主練の日となっている。日曜日に遅刻しながら出席している。Bさんも最近お目にかかることがほぼ無くなってきた。なんでも病気療養が必要で長期に休んでいるという話を耳にした。
いつの間にか私は四段となり、先日Bさんと久しぶりに組んだ。てっきりBさんはずっと以前に四段になっていると思ったが、三段のままであった。さらに型が忘却しているしているようだった。
私はともかく今日中に一通り、杖の型の手順を思い出してもらおうと太刀の側に徹した。K先生が稽古中仕打交代(杖、太刀を持つ者が入れ替わる)を告げたが、杖がまともにできていないBさんに太刀側が出来るわけがない。そのまま続行した。
私に申し訳なさそうにしているBさん。杖側も稽古した方が良いとそりゃそうんだけど、Bさんに言った。
「私も何度もサボり、型を忘れてしまった。型を忘れるといたたまれなくて、稽古に来るのも苦痛になってまたサボりたくなる(それでもBさんは今日頑張って来れた。偉いと思った。)。私は間合いの練習をしているから気にしなくて良い。せっかくだからこの場で型の手順を思い出しましょう。細かいところは他の上の先生に習って下さい。」
火曜日稽古会でサボって、型を忘れて心細かった私をはI夫妻とともに暖かく迎え入れてくれたBさんへの恩返しだ。
それにBさんは特殊なくらい背が低い。すると間合いが特殊になる。Bさんがのびのび出来るような太刀の振る舞いと間合い、そして強い気合いの稽古ができた。私が誤解していた正眼の杖の使い方や太刀の振り方の指導を上段者の先生にいくつかして頂きとても得るところが多かった。思えばBさんのお陰で学んでいたな。
とても激しい気合いと動作、穏やかな心で稽古ができた。
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