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四川名家経方実験録に学ぶ循環器・血管疾患の経方加減

漢方医学

『四川名家経方実験録』に収載されている「循環器・血管疾患(心系)」の名医たちによる8つの症例(医案)について、病歴、病機、方剤、加減の方意、および具体的な配薬と用量を解説する。

1. 蒲輔周 案:附子湯加減による高血圧・冠動脈硬化性心疾患(陳某、48歳女性)

  • 【病歴】 1964年3月24日初診。主訴は4年前からの頭痛(頭暈)であり、血圧は140〜190/90〜120mmHgの範囲で大きく変動していた。病院にて「高血圧」および「冠状動脈硬化性心臓病(冠動脈供血不足)」と診断された。胸悶、心悸(心慌)、多夢を伴う睡眠不良、虚煩懊憹、形体の肥満化、腰の酸痛、四肢の膨満感、下肢の軟弱・重だるさ、小便頻短を伴っていた。血圧は168/98mmHg、舌質は正常、舌根部の苔は薄黄膩、脈は沈遅であった。

 

  • 【病機】 陽虚湿盛(脾腎陽虚・寒湿内停)および虚陽上浮(虚陽擾動)である。舌根の薄黄膩苔は一見すると湿熱を疑わせるが、脈が「沈遅」であるため脈に従い、その本質は脾腎の陽気虚衰による陰寒(寒湿)の停滞と診断された。寒湿が胸陽を阻むため胸悶や心悸が生じ、下焦の陽虚によって虚陽が上浮し、頭暈や心煩が引き起こされていた。

 

  • 【方剤】 附子湯(『傷寒論』)加減

 

  • 【処方と用量の詳細】

  • 初診(5剤): 党参 6g、生白術 6g、茯苓 6g、白芍 6g、川熟附子 4.5g(打)、桑寄生 9g、炮狗脊 9g、杜仲 9g、生龍骨 9g(打)、生牡蛎 12g(打)。

 

  • 二診(5剤): 腰痛が治まり頭暈が減じたものの、午後になお眩暈があり、夜間に少腹(下腹部)の隠痛、舌は暗紅無苔へと変化した(陽虚湿盛に陰液不足が加わった状態)。初診方から生白術を去り、茯苓を「連皮茯苓 9g」に変更した。川熟附子を18g(先煎)へと大幅に増量し、炮川楝子 4.5gを加えた。

 

  • 三診(5剤): 頭暈、虚煩、下腹部痛が好転した。血圧118/78mmHg、舌正常無苔、脈弦緩。二診方から狗脊を去り、熟地黄 6g、枸杞子 6gを加え、附子を4.5g(先煎)に減量した。

 

  • 四診(5剤): 頭暈と心煩は消失し血圧も正常化したが、胸悶と睡眠中の息苦しさ、多尿が残存していた(胸陽不足・痰湿阻滞)。十味温胆湯を5剤(隔日1剤)投与したところ、諸症が完全に治癒した。

 

  • 【加減の方意】 附子と党参で元陽を温補して寒邪を除き、白術・茯苓(四君子湯の意)で健脾利湿を図る。党参と白芍の同用によって和営斂陰し、生龍骨・生牡蛎で上浮した虚陽を鎮潜・摂納する。桑寄生・杜仲・狗脊は補腎強腰して下焦の根本を固める。二診における附子の大幅増量(18g)は、温陽散寒を強化して腹痛と眩暈を制するためであり、川楝子は調肝行気して痛みを止める。三診における熟地黄・枸杞子は「陰中求陽」の法に基づき、陰液を補いつつ温陽効果を定着させる狙いがある。

 

2. 蒲輔周 案:真武湯加減による陽虚水逆型高血圧(馬某、70歳女性)

  • 【病歴】 1964年4月初診。3年前から頭暈・頭痛を自覚し、高血圧と診断されていた。耳鳴り、難聴(労作により増悪)、肥満傾向、多痰、怕冷(寒がる)、手足偏涼(手足の冷え)、飲食喜温(温かい飲食物を好む)、飲水則脹(水を飲むと腹が張る)、尿失禁、夜間頻尿を伴っていた。血圧は230/118mmHgであった。

 

  • 【病機】 陽虚水逆(脾腎陽虚、水湿上逆、虚陽上浮)である。怕冷、手足の冷え、尿失禁、夜間頻尿は脾腎陽虚の徴候である。陽気虚衰により体内の水液が気化されず、水飲(痰湿)となって中焦に停滞するため、飲水による腹満や肥満、多痰が生じる。この水気が上逆して頭面部を乱す(水逆)ことで、頭痛・頭暈や耳鳴り、虚陽の上浮が引き起こされていた。

 

  • 【方剤】 真武湯(『傷寒論』)加減

 

  • 【処方と用量の詳細】

  • 初診(7剤): 茯苓 9g、法半夏 9g、生白術 6g、白芍 6g、川附片 6g、生姜 4.5g、生龍骨 12g、生牡蛎 12g。

 

  • 二診(12剤): 頭暈が軽減し、睡眠が好転した。血圧210/108mmHg。初診方に五味子 3g(打)、亀板 12gを加えた。

 

  • 三診: 頭暈・頭痛は軽微となり、精神状態が好転、痰量が著減し、小便も正常化した。二診方に橘紅 4.5g、炒白芥子 6gを加えた。血圧は200/100mmHgに安定し、諸症が減退した。

 

  • 【加減の方意】 真武湯(附片・白術・茯苓・生姜・白芍)で脾腎を温めて気化を促し、利湿を図る。法半夏を加えることで茯苓・生姜と合わさり「小半夏加茯苓湯」の意となり、上逆する水飲(水逆)を強力に降逆化痰する。生龍骨・生牡蛎で上浮した虚陽を下焦に引き下げる。二診の五味子は肺気・陰液を収斂し、亀板は滋陰潜陽を助ける。三診の橘紅・炒白芥子は、皮膜の間に潜む頑痰を徹底的に温化・排泄させるためである。

 

3. 任応秋 案:人参湯(理中湯)加味による急救心陽・冠心病心痛(王某、54歳男性)

  • 【病歴】 1974年7月15日初診。10日前から心前部に圧迫痛(圧搾性疼痛、1回約2分間)が頻発し、「心絞痛(狭心症)」と診断されて入院したが、発作は日増しに増加していた。数日前の夜間就寝直後、心前部に激痛が走り、顔面蒼白、冷汗、左肩および前腕内側への放散痛、激しい胸悶を呈した。手足厥冷(手足が氷のように冷たい状態)、発痛時の冷汗と寒慄不禁(激しい震え)を伴い、表情は死の恐怖に満ちていた。舌質は胖嫩で無苔、脈は沈細而弦、時に間歇(不整脈)を伴っていた。

 

  • 【病機】 陽気衰竭(心陽暴脱)、心失温煦、痰瘀阻閉心脈(亡陽厥逆の重篤症)である。心臓の陽気が急激に虚脱しかけて手足厥冷、自汗、不整脈が生じ、陽虚によって心血が温められずに凝固し、寒痰と瘀血が心脈を閉塞して激しい心痛(心痛徹背)を誘発していた。

 

  • 【方剤】 『金匱要略』の人参湯(理中湯)に四逆湯、近效朮附湯、独聖散、失笑散の意を合方

 

  • 【処方と用量の詳細】

  • 初診(3剤): 白人参 15g(五銭)、炙甘草 15g(五銭)、干姜 9g(三銭)、炒白術 15g(五銭)、川附片 9g(三銭)、五霊脂 9g(三銭)、山楂 9g(三銭)、乳香 3g(一銭)、降香 9g(三銭)。

  • 服法:水煎して去滓後、「米酢をスプーン1杯(一匙)」衝入(混和)し、温かいうちに服用させる。
  • 二診(10剤): 3剤の服用で劇烈な絞痛は一度も再発せず、顔色は紅潤となり、両手は温まって不整脈も消失した。胸悶と膝下の冷感が残存していたため、脾腎の陽気をさらに温補した。白人参 15g(五銭)、炙甘草 15g(五銭)、干姜 9g(三銭)、炒白術 15g(五銭)、川附片 9g(三銭)、肉桂 3g(一銭)、全当帰 9g(三銭)、山楂 9g(三銭)、陳皮 6g(二銭)、赤芍 12g(四銭)を濃煎して服用させ、完治に至った。

 

  • 【加減の方意】 人参湯(人参・白術・干姜・甘草)で中焦の陽気を温め、気血生化の源を立て直す。川附片を加え、「四逆湯(手足厥冷を救う)」「参附湯(陽脱を急救する)」「近效朮附湯(卒暴心痛を治す)」の意を合一させて心胸の陽気を救急する。標実である激痛に対しては山楂(独聖散の意)、五霊脂(失笑散の意)、乳香、降香を配して活血化瘀・温通止痛を施す。米酢一匙の配伍は、酸味によって薬力を肝(血分)へと引き込み、心絡の痙攣を緩めて止痛効果を倍増させる工夫である。

 

4. 任応秋 案:苓桂朮甘湯・茯苓四逆湯・五苓散による風湿性心臓病・心不全(馮某、32歳女性)

  • 【病歴】 1974年9月初診。主訴は1ヶ月前からの咳嗽と、10日前からの喀痰への血糸混入である。夜間発作性咳嗽が出現し、過労後に喀痰へ血糸が混じるようになった。わずかな労作でも呼吸困難を覚え、「慢性風湿性心臓病(リウマチ性心疾患)、左心房衰竭期(心不全)」と診断された。脈は細数で時に間歇(不整脈)、舌に瘀斑があり、顔面および口唇に紫紺(チアノーゼ)を呈していた。小便短少、下肢の軽度浮腫、心悸不寧(喜按)、胸悶、咽干、煩躁、四肢関節の冷痛を伴っていた。

 

  • 【病機】 風寒湿の邪が皮毛から肺へ(肺痹)、脈から心へ(心痹)と侵入し、心肺の陽気と陰液の双方を消耗させた「肺気心陽両虚、風寒湿邪阻閉」である。

 

  • 【処方と用量の詳細(3段階の変方)】

  • 第一段階:初診3剤(苓桂朮甘湯加味)— 温中化気・強心益肺・祛風除湿

  • 配薬と用量:茯苓 60g(二両)、桂枝 15g(五銭)、白術 15g(五銭)、炙甘草 12g(四銭)、川郁金 9g(三銭)、威霊仙 18g(六銭)、茜草根 9g(三銭)、豨薟草 30g(一両)、炙遠志 9g(三銭)、清半夏 9g(三銭)。

 

  • 方意:苓桂朮甘湯で脾胃を健やかにして生痰の源を断ち、水飲を化す。桂枝・甘草(桂枝甘草湯)で心陽を補強する。郁金・茜草で心絡を通じさせ、半夏・遠志で降逆止咳を図る。多量の威霊仙(18g)や豨薟草(30g)によって経絡の風寒湿邪を駆逐する。

 

  • 第二段階:二診3剤(茯苓四逆湯加味)— 補益心肺・回陽救逆・煩躁の鎮静
    • 経過:服薬後、心悸や胸悶は軽減したが、脈は細数で結代があり、発作性の煩躁(焦躁感)および口干(口渇はない)が出現した。心肺の陰陽(気血)がともに枯渇した少陰病の危機的状態と判断された。

 

  • 配薬と用量:茯苓 30g(一両)、白人参 18g(六銭)、制附片 9g(三銭)、炙甘草 9g(三銭)、干姜 6g(二銭)、丹参 18g(六銭)、川郁金 9g(三銭)、威霊仙 18g(六銭)、豨薟草 30g(一両)。

 

  • 方意:茯苓四逆湯を選択した。白人参・茯苓で肺の気陰(陰液)を補って「煩」を治め、附子・干姜・甘草で心腎の陽気を奮い立たせて「躁」と不整脈を解決する。丹参・郁金で通営活血を図る。服薬後、不整脈と紫紺は消失した。

 

  • 第三段階:三診3剤(五苓散加味)— 滲湿利水・関節痛と浮腫の完全寛解
    • 経過:心肺の陽気・陰液は回復したが、尿量減少、下肢浮腫、関節痛が残存していた。

 

  • 配薬と用量:桂枝 9g(三銭)、生白術 15g(五銭)、茯苓 30g(一両)、猪苓 12g(四銭)、沢瀉 18g(六銭)、桑寄生 18g(六銭)、五加皮 9g(三銭)、半夏 9g(三銭)、炙甘草 9g(三銭)、生姜 6g(二銭)。

 

  • 方意:五苓散へと切り替え、茯苓・猪苓・沢瀉で水腫を尿として排泄させ(滲湿利水)、桑寄生・五加皮で風湿を除き、小半夏湯で胃の逆気を和らげて完治へと導いた。

 

5. 馬烈光 案:瓜蒌薤白半夏湯合方による心腎陽虚・痰瘀阻絡型胸痹(霍某、60歳男性)

  • 【病歴】 1999年4月10日初診。5年来、胸部の圧搾性疼痛を繰り返し「冠心病」と診断されていた。直近1週間、夜間や食後に激しい心痛(心痛徹背、1日4〜5回)が頻発し、動悸、胸の圧迫感(気緊)、煩躁、冷汗、畏寒、食欲不振、排便困難(2〜3日に1行)、排尿後の滴下、夜間頻尿(2回)、不眠(中途覚醒しやすい)、夜間の陣発性潮熱・発汗を呈した。他医による真武湯+苓桂朮甘湯+桃紅四物湯(熟地黄・白芍を含む)の治療では効果が得られなかった。舌は淡胖で辺尖に瘀点があり、苔は薄白膩、脈は渋・結(結代脈)であった。

 

  • 【病機】 心腎陽虚により生じた痰湿と瘀血が強固に結びつき(痰瘀搏結)、心脈(冠動脈)を物理的に阻閉した「胸痹心痛(不安定狭心症)」である。

 

  • 【処方と用量の詳細】

  • 初診(7剤): 他医の処方から滋膩によって痰を停滞させる「熟地黄」と、酸斂によって痛みを固定化させる「白芍」を去り、大剤(多用量)の瓜蒌薤白半夏湯を合方した。制附片 20g(先煎)、桂枝 15g、干姜 10g、薤白 20g、清半夏 30g、全瓜蔞 30g、白術 10g、茯苓 15g、桃仁 10g、紅花 10g、当帰 15g、川芎 15g、炙甘草 10g、高粱酒 50ml(同煎)。

  • 煎服法:附片を冷水から沸騰させて30分間先煎したのち、諸薬を加えてさらに20分間煎じて温服させる。

 

  • 二診(7剤): 心痛発作は夜間1〜2回に激減し、諸症状が好転した。標実(瘀血)が緩和したため当帰・桃仁・紅花を去り、丹参へと変更した。制附片 15g(先煎)、桂枝 10g、干姜 10g、薤白 15g、清半夏 20g、全瓜蔞 15g、白術 10g、茯苓 15g、丹参 15g、川芎 15g、炙甘草 10g。

 

  • 【加減の方意】 熟地黄と白芍を除去し、重用量の瓜蒌薤白半夏湯(全瓜蔞 30g、薤白 20g、半夏 30g、高粱酒 50ml)を合方した。全瓜蔞で頑固な痰を削ぎ落として開胸し、薤白で胸陽を宣通させ、半夏で降逆化痰する。高粱酒の辛散温通・走竄作用によって心脈を塞ぐ痰瘀を一気に突破させた。二診では活血剤を丹参へと転方して正気を保護し、完治へと導いた。

 

6. 元魯光 案:瓜蒌薤白半夏湯加味による冠心病心痛(濮某、67歳女性)

  • 【病歴】 2004年12月23日初診。10余年にわたる冠心病・狭心症の病歴があり、半月前から症状が再発・増悪していた。肥満体型、胸部圧迫痛、頭暈、動悸息切れ(労作後加重)、全身倦怠感、食欲不振、睡眠不良を呈していた。舌質は暗淡、辺に歯痕があり、苔は白厚膩、脈は結代であった。心電図検査では心筋虚血を示していた。

 

  • 【病機】 脾胃の運化失職を本とし、痰飲が上蒙して胸陽を阻閉し、さらに気滞血瘀を合併した「胸痹心痛」である。肥満や飲食不摂生によって脾胃が損傷されて痰湿が内生し、上方の心胸部を閉塞して心陽の巡りを阻害し、気滞血瘀を引き起こして心脈が不通となった病態である。

 

  • 【方剤】 瓜蒌薤白半夏湯(『金匱要略』)に健脾益気・活血養血薬を加味

 

  • 【処方と用量の詳細】

  • 初診(7剤): 瓜蒌殻 12g、薤白 10g、半夏 10g、丹参 10g、川芎 10g、黄耆 30g、山薬 30g、砂仁 10g、炒酸棗仁 10g、夜交藤 30g、鶏内金 15g、甘草 3g。

 

  • 経過: 7剤服用後、諸症状が著明に改善し、さらに同方を7剤服用して全治した。心電図の虚血像も正常化した。

 

  • 【加減の方意】 瓜蒌殻(肺気を泄しすぎないよう全瓜蔞ではなく殻を採用)、薤白、半夏で胸陽を宣通し、降逆和胃して気の昇降を調える。生痰の源である脾胃を根本から強化するため、黄耆 30g(脾陽を補う)と山薬 30g(脾陰・腎精を補う)を重用して陰陽双補を施し、砂仁・鶏内金で中焦の湿濁・食積を取り除く。丹参・川芎で活血通絡し、酸棗仁・夜交藤で心肝の陰血を養って安神を図った。

 

7. 王暁東 案:小青竜湯合理中湯による冠心病・心機能不全(李某、64歳男性)

  • 【病歴】 主訴は半月前からの心疲労感(心累)と喘鳴(気喘)である。受涼(冷えに遭うこと)を契機に突如発症し、体動により著しく悪化して仰向けに寝られない(不能平臥)、両足浮腫、胸脘痞満、形寒肢冷、小便短少を呈した。冠心病の既往歴がある。両側肺底部に細湿ラ音(爆裂音)を聴取し、心拍数85回/分、両下肢に軽度浮腫を認めた。舌苔は白滑、脈は弦滑であった。

 

  • 【病機】 胸痹兼支飲、水飲凌心(久病による脾陽虚から水飲が内停し、心肺へと上凌した病態)である。長年の冠心病によって脾腎の陽気が虚衰していたところへ外寒が侵入し、停滞した水飲が心陽と肺気を脅かして激しい喘鳴、起坐呼吸、水腫を招いた。

 

  • 【方剤】 小青竜湯 合 理中湯(『傷寒論』)に茯苓を加味

 

  • 【処方と用量の詳細】

  • 初診(7剤): 生麻黄 10g、桂枝 10g、干姜 10g、細辛 6g、北晒参 10g、白術 10g、半夏 10g、白芍 10g、五味子 10g、茯苓 10g、甘草 3g。

 

  • 二診(7剤): 心疲労感と喘鳴が激減し、両足の浮腫は消退した。発汗・発散作用の強い生麻黄を初診方から去り、7剤服用させて完治に至った。

 

  • 【加減の方意】 小青竜湯(麻黄・桂枝・干姜・細辛・半夏・芍薬・五味子)で温肺化飲・宣肺平喘し、外寒を散じて内飲を温化する。これに理中湯(北晒参・白術・干姜・甘草)を合方して中焦脾土の陽気を温補し、「培土生金」の機序によって水湿を根底から化去する。さらに茯苓 10gを配して淡滲利水を施し、心臓を圧迫していた水を小便から排泄させることで、心機能不全に伴う水腫と気喘を解消した。

 

8. 楊宇 案:黄連阿膠湯加減による高血圧・不眠・眩暈(黄某、62歳男性)

  • 【病歴】 約10年の高血圧病歴があり、降圧薬を断続的に服用していた。直近1ヶ月、頭目眩暈、歩行不安定、耳鳴り、難聴、心煩急躁、入眠困難、多夢中途覚醒、口舌乾燥がみられた。顔面潮紅、音声高亢、血圧190/106mmHg、脈は弦細数、舌質は紅、舌苔は微黄干を呈していた。

 

  • 【病機】 少陰熱化、水不涵木、心腎不交、虚風内動(腎陰不足により肝木が失養し、心火が偏亢・上炎して虚風が上擾した病態)である。腎陰(真陰)の枯渇によって心火が上炎して不眠を誘発し、さらに肝陰不足に伴い虚風が内動して激しい眩暈と血圧急上昇を引き起こしていた。

 

  • 【方剤】 黄連阿膠湯(『傷寒論』)加減

 

  • 【処方と用量の詳細】

  • 初診(5剤): 黄連 3g、黄芩 10g、白芍 30g、阿膠 10g(烊化兌服)、鶏子黄 2枚(去清用黄、攪入薬汁)、生地黄 30g、鉤藤 15g、生石決明 30g、生牡蛎 30g、生麦芽 15g、酸棗仁 15g。

 

  • 二診(10余剤): 心煩と不眠が好転し、血圧も低下した。心火が鎮静化したため「補北(滋腎水)」を重んじ「瀉南(清心火)」を弱める方針へと転換した。初診方から黄芩と酸棗仁を去り、陰液を固める山茱萸 15gを加えて10余剤継続し、治癒に至った。

 

  • 【加減の方意】 「軽瀉南・重補北(心火を軽度に清解し、腎水を重く補う)」の治法に基づき構成されている。黄連は原方の重用と異なり3gの少量に留め、黄芩とともに心火を穏やかに清解する。白芍(30gと重用)、阿膠、鶏子黄、生地黄 30gによって下焦の真陰(腎水・肝陰)を強力に補い、陰を厚くして陽を潜降させる。鉤藤、生石決明、生牡蛎で潜陽熄風を施して眩暈と高血圧を抑え、生麦芽で肝気の条達を助けて薬力が上攻するのを防ぐ。

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