『経方方証縦横』における「桂枝加芍薬生姜人参新加湯(以下、新加湯)」の「弁証要点」と「仲景方論」について、ポイントを整理して解説する。
1. 仲景方論(古典の根拠)
張仲景の『傷寒論』において、新加湯は以下の条文(第62条)によって示されている。これが本方の運用の原点である。
『傷寒論』第62条:
「発汗後、身疼痛し、脈沈遅の者は、桂枝加芍薬生姜各一兩人参三両新加湯がこれを主治する」
2. 弁証要点(臨床応用のための5つのポイント)
実際の臨床において新加湯をどのように見極め、活用すべきか、以下の5点に集約した。
① 陰傷と陽傷の鑑別
体質が虚弱な人が不適切な発汗(発汗不当)を行った場合、病態は「陽を傷つける状況」と「陰を傷つける状況」の2種類に分かれる。
陽虚に陥り、汗が漏れるように止まらない場合は「桂枝加附子湯」の適応となる。これに対し、陰血(気血)が損なわれた結果として身体が痛み、脈が沈遅である場合には、本方(新加湯)を用いる。
② 臨床応用の具体的な目標
本方は、気血が虚損し、筋肉や筋脈を十分に滋養できなくなった病態に対応する。
具体的な症状としては、四肢や身体の疼痛をはじめ、全身の倦怠感、動きたがらない(少動)、筋肉の無力感などが挙げられる。これらの症状が見られる場合は、すべて本方をベースに適宜加減して用いることができる。
③ 疼痛の臨床的特徴
新加湯が主治する「身痛(身体の痛み)」には明確な特徴がある。激しい痛みというよりも、全身が綿々とだるく痛む「酸困」の感覚が強い。
また、少し動く(労作する)と痛みが悪化し、安静にしていると軽減する傾向がある。脈は多くの場合、沈緩または細弱を呈し、症例によっては何年もの間、慢性的に治らないこともある。
④ 治療の大前提
大凡、四肢・筋肉・筋脈が滋養を失ったことによる諸症状に対しては、「営衛を調和し、血脈を疎通させること」が治療の大前提となる。
新加湯の構成はこの前提に則っており、営衛を調和した上で、気を益し血を補う生薬(人参など)を配しているからこそ、確実な効果が現れるのである。
⑤ 柔軟な使用条件
本方を運用する際、必ずしも「発汗後」というプロセスに縛られる必要はない。表証(風邪の初期症状など)の有無に関わらず、身体の痛みがあり、脈が沈遅で、気・営の不足(気血の不足)に属するものであれば、すべて投与可能である。
また、まだ発汗治療を受けていない段階であっても、素体(元々の体質)として陰虚があり、外感(感冒など)によって自然と汗が出て、身体が痛む者にも極めて有効である。


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