最近の稽古で、杖の操作における「手の内」、とりわけ小指と薬指の役割について再確認する機会があった。手持ちの資料を改めて読み返してみると、これまでの自身の認識であった「強く握る」という感覚とは少し異なる、繊細な身体操作のヒントが見えてきた。
備忘録として、今回の気づきをまとめておく。
1. 「握る」のではなく「接触(コンタクト)」を保つ
これまで「小指を締める」という教えを、「常に力を込めて握り続けること」だと解釈してしまいがちであった。しかし、西岡常夫師範の指導記録を見直すと、重要なのは力ではなく「接触させておくこと(離さないこと)」であると語られている。
西岡師範は、小指側が杖から離れてしまうことを「一番怖い」と表現し、「ちょっと接触させたってのが一番僕は必要だと思ってますね」と述べている。小指が杖から離れると、テコの原理が効かなくなり、道具が急激に重く感じられる。その重さを支えようとして腕や肩に余計な力が入り、結果として「無駄な力」を使ってしまうのである。
「握りしめる」のではなく、「皮膚が常に杖に触れている状態をキープする」。この意識の変化が、脱力と冴えを生む鍵になりそうだ。
2. 小指は「刃筋」と「軌道」の舵取り役
なぜ小指が重要なのか。それは単に杖を落とさないためだけではない。資料には「小指を決めりゃ完全に刃筋が助かった」という言葉が残されている。
剣道や杖道において、小指と薬指の締めは、道具の軌道(刃筋)を正確にコントロールするために不可欠である。ここが緩むと、真っ直ぐ相手の目に向けて杖を引いたり、突いたりすることができなくなる。小指は、車のハンドルや船の舵のような役割を果たしているのだと再認識した。
3. 滑らせる時は「親指と人差し指のリング」
杖道の大きな特徴である「手を滑らせる(スライドさせる)」動作。ここで小指を握り込んでいてはブレーキがかかってしまうが、かといって指をパッと開いてしまっては前述の通りコントロールを失う。
ここで重要になるのが、「親指と人差し指で作るリング」の活用である。
石田博明師範の解説によれば、逆手の握りは「親指と人差し指でリングを作る」形が基本となる。手を滑らせる局面では、このリングをガイド(筒)のようにして杖を走らせ、その間、小指と薬指は「握らず、離さず」の絶妙な接触を保つ。そして、動作が極まる瞬間に小指側を締めてロックする。
- 滑走中: 親指・人差し指のリングがガイド、小指は触れているだけ。
- 停止・打突: 小指・薬指を締めて「本手」や「逆手」の形を極める。
この使い分けがスムーズにできることが、上達への道であると感じた。
まとめ
「小指を握る」という言葉を、「力を入れる」ことと同義に捉えてはいけない。「常に接触させ、道具の重さを消し、軌道を安定させ、必要な瞬間だけ締める」。
この感覚を次回の稽古で実践し、肩甲骨周りの自由度や杖の走りがどう変わるか、検証していく。


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