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【漢方】「今も続けています」と胸を張って言うために

漢方医学

 現在、漢方の講習会で使うスライドを作成している。テーマは「漢方の学び方」。私自身が長年実践し、このブログでも「絶対的な勉強法」としてお伝えしてきた方法に、再び光を当てる機会となった。

 その方法とは、「テーマを決めて『傷寒論』を通読する」ことである。 読み下せない文章に振り仮名をふり、理解の及ばぬ部分には解説を書き込む。そうして繰り返し読むうちに、本は自分だけの知識の森となり、深みを増していく。やがて、患者さんの症状を前にした時、該当する条文が即座に開けるようになるのだ。これは師匠から受け継いだ良い方法で、師匠自身もまた、繰り返し実践しているようであった。

 師の姿に倣い、私も胸を張って『今も続けている最高の勉強法です』と記そうとした、その時。私の手は、ぴたりと止まった。 ふと振り返ると、いつも手元にあったはずの小さな『傷寒論』が、本棚の隅で静かに埃をかぶっている。この頃、まったく開いていないではないか。 私は自問自答した。「なぜ、あんなに大切だった習慣をやめてしまったのだろう?」と。

 思い当たる理由は、いくつかあった。 「もう覚えた」という、今思えば恥ずかしいほどの慢心。日々の業務に追われ、本を開くのが億劫になっていたこと。そして、視力の衰えや、本をいつも入れていた鞄の傷みという、ささやかな、しかし現実的な問題である。

  だが、不思議なものだ。一度立ち止まって客観視すれば、どれも乗り越えられぬ壁ではなかった。視力は道具で補えるし、鞄は新しい相棒を探せばいい。

 一番の問題は、私の心にあったようだ。

 講習会ではまずは自分自身が実践者でなければならない。 再び『傷寒論』を手に取る。 講習会で胸を張るため、そして何より、生涯一人の学び手であるために。

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