神秘湯配薬の歴史的変遷から学ぶ
本剤は同一名称で各時代経ごとに異なる配薬となっている。近いものから猛烈に離れた加減まで様々だ。方意は石膏を除いた麻杏甘石湯加柴胡だと私は認識、というか記憶して使える様にしている。
神秘湯はまず外台秘要に登場する。久咳奔喘し座臥するを得ず、併に喉裏牙声して、気絶するを療する、とある「古典に生きる方剤学エキス漢方(小山誠次著 メディカルユーコン)」。配薬は麻黄、蘇葉、橘皮、柴胡、杏仁である。その後幾つもの医書に引用され加減された。我が国では近代本邦では勿誤薬室方函で厚朴が加わった。橘皮が陳皮に代わり、甘草を加えて現代のエキス剤の配薬が完成した。
気管支喘息だけ?
エキス剤の適応疾患を覗き見ると気管支喘息がメインである。しかしそれだけに使うのはもったいない。呼吸器症状がある方の基本、宣散粛降薬を意識するのが大基本である。それが揃っているからだ。私自身麻杏甘石湯を知りさらに神秘湯が創薬されて時代を経て多くの先達が加減を残した。それをずらーっと見て、ああなんと配薬は、加減は自由なんだと感嘆したものだった。
柴胡追加はありがたい
思い起こせばこれまで太陽、少陽合病に対してうんざりするほど生薬を配薬してきた。この柴胡はとても意義深い加減である。宣散のルートでもあるので当然ある方がいい。
加減方の1例として、三因極一病証方論の原法に桔梗や人参、五味子を加えるのは参考になる。宣散粛降及び守胃を増強している。ここでもまあなんでも良いんだよって教えてくれる。
神秘湯を経方医学で察する。配薬はエキス剤にした。
方意はこれに尽きる
繰り返すが、治方は宣散粛降疎胆である。近い時代の経方方剤は麻杏甘石湯に柴胡を加えた配薬を発想の根本とする。しかし胃気は弱い。胃気は鼓舞されていない。だから石膏以外の降気薬の杏仁、橘皮で対応している。それにしても勿誤薬室方函で加わった厚朴は降気薬はなんでも良いのだと納得させてくれる。
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