70歳代、女性。耳鳴治療中。
おかしい。耳鳴の症状に改善は見られるものの、完治には至らない。
そんな折、脈診の結果が劇的に変化した。変化すること自体は良いのだが、なぜこれほどまでに「沈脈」なのだろうか。
見れば、わずかに浮腫(ふしゅ)がある。本人も、孫から浮腫んでいると指摘されたと漏らした。
そこで浮腫から想起される範囲で採血を行ったが、結果に明らかな異常は認められなかった。
私は半ば諦めに近い心境で、「耳鳴の治療は一旦休みましょう。先に浮腫の治療を始めましょう」と告げた。確かに肌水(皮下の水分)は過剰な状態にある。
そこで腹診を行い、ようやく気付いた。
**木防已湯証(もくぼういとうしょう)**の腹証、すなわち「心下(しんげ)」が猛烈に硬くなっているのだ。
なるほど、そうか。
この心下の硬さが胸脇の堅さと相まって「脈閉(みゃくへい)」を招き、結果として沈脈を呈していたのだ。
これまでも腹診は何度か行っていた。しかし、大きな変化が見られなかったために、その可能性に思いが至らなかったのである。この腹証であれば、十分に浮腫の原因となり得る。
本日は木防已湯加柴胡加減(もくぼういとうかさいこかげん)で対応した。来週には脈が浮いてくるはずだ。
……実にああ、しくじった。


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